小説・漫画好きの感想ブログ

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「ざらざら」川上弘美著 感想 

 本年82冊目の紹介本です。

 川上弘美の文庫最新刊、恋愛短編集です。
 「センセイの鞄」がとても良い作品で、他の作品も結構好きなのですが、恋愛ものに関しては相性が悪いのかなかなか入り込めませんでした。もともとが川上弘美さんの書く作品に出てくる女性達は淡々としていて、ある意味、薄味なタイプが多いです。それが影響しているのかも知れませんが、感情の起伏が分かりづらく表に向かってでてこないタチなので、余計に男性として理解しがたいところがありました。
 やっていることだけ見ていると、不倫も多いし、ゆきずりに一気に関係にいたるパターンのものもあるのですが、それがどうにも低温で、恋愛というともっとこう盛り上がったりウキウキして楽しくて仕方がないものだと信じているクチなので余計にちょっと距離を置きながらの読書でした。
 ただ、ところどころで、その低温の中に、男性と女性の違いが感じられる話もあったりするので一概に面白くなかったというのでないのですけれどね。例えば「山羊のいる草原」という作品。この作品の主人公の女性の杏子は、中川さんという彼氏が好きで好きでたまらなく、週末に彼氏と会うのだけが楽しみで仕方がないといったくらいの惚れっぷりだったのが、ある日彼に振られてしまう。「好きじゃなくなったから」と一言で完膚なきまでにふられた彼女はしばらくは泣いて泣いて魂が抜けたように過ごす。けれど、ある日、ふと彼の名前を読んでみても、心の中に好きという感情も嫌いという感情もまったく起こらないことに気がつくというお話なんですが、、この感触がなんだかとても怖かったです。女性のほうが未練がましくなくて、別れたらさっぱりしていて、すぐに次の恋へといけるというのはよく聞く話です。ですけれど、こういう風にそこまで思い詰めていたものが全く存在すらしなくなる、名前を出してみても何も感じなくなるというのはなかなかどーして怖いなぁと思います。
 僕なんかだと、別れたあとでも、それが十数年前の彼女であれ、最近別れた彼女であれ、名前を口に出すとそのときのいい思い出と一緒になんだか少し優しい気持ちが出てきてしまうんですが(嫌な思い出や嫌な事も思い出さないこともないのですが、今現実に害がない以上それはもうどうでもいいことになっちゃって、日常のちょっといいことの方が記憶に残ります)、身の回りの女性に聞くとたいていの女の子も「そんなものょ」などと言うので、やっぱり女性は怖いなぁなどと思ったりです。
 なんだか変なまとまりのない感想ですが、そんな風にふわふわとした感想をもってしまう一冊でした。感情の高まりがわかりづらい相手と恋愛したら、こんな風な不思議な感覚に悩むのかもしれませんね。

ざらざら (新潮文庫)

ざらざら (新潮文庫)

 追記:今から映画「エンジェルウォーズ」見にいってきます。がらりと変わって妄想と激しい戦闘が売りの女性主人公のアクション映画、のようです。アメコミっぽい感じでしょうか。オンラインゲームのようだとも。どんな風なものやら。帰ったらまた感想書きますね。