小説・漫画好きの感想ブログ

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「秘曲 御宿かわせみ18」 平岩弓枝著 感想

 本年56冊目の紹介本です。
 御宿かわせみ、18巻です。
 幕末の江戸を舞台にした人情捕り物話のシリーズ18巻です。ひさびさに時代物を読ませていただきました。
 さて。今回の巻では、「子供」が隠しキーワードになっています。
 表題作の秘曲は、能の宗家のお家騒動にまつわるお話で、このお話では一子相伝の秘曲の歌と舞を受け継いでいない嫡男が、遠く京都に離れて暮らす宗家の隠し子をおびき出して殺そうとするという大変怖いお話。他の「江戸の馬市」「目籠ことはじめ」なども子供がキーワードになっています。
 そして、子供といえば、主人公である東吾と「かわせみ」の女主人のるいの間には子供が出来ないことが今までもたびたび作品内で話の肝に使われていましたが、なんとこの巻では東吾に隠し子というか息子が生まれていたらしいという話が出てきます。(この隠し子ができることになったエピソードは過去作品にも出てくるのですが、まさかあれがここにきてという感じで驚きます)
 これは平岩弓枝さん一級の遠い未来を予見しての伏線なのか、それとも、単に一過性のものなのか、、、、このあたりは未だ分かりませんが、今回も哀しいお話が続きました。捕物帖、ミステリなのですから、犯罪が起き、被害者が出るのは仕方ないことなのですが、子供がキーワードになっている事件が続くと、少しため息をつきたくなります。とはいえ、そうであっても、東吾の損得抜きで動き回り、人助けをし、事件を解決する姿と、るいをはじめとした彼の家族やその周囲の人物たちのつきあいに読み手が心暖められるというのもいつも通りで、一言でいえば人情の機微というものを知り尽くした平岩先生に振り回される一冊です。
 願わくば、東吾とるいが、その周囲の家族たち同様に幸せになってくれることを。