小説・漫画好きの感想ブログ

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「夏目友人帳」11巻 緑川ゆき著 感想 

 本年53冊目の紹介本です。
 アニメ第三期も放送決定で波にのる「夏目友人帳」のコミック最新刊です。
 祖母夏目レイコの血を受け継ぎ、普通の人には見えない妖かしを見ることができる夏目。彼は、小さい頃に両親を失ったのと、その妖怪を見ることが出来る体質故に、まわりに気味悪がられ、親戚の家をたらいまわしにされ、常にいじめられてきました。その夏目も今の藤原夫妻にひきとられてからは、大妖のにゃんこ先生が側についていることもあり、徐々に精平穏な日々を暮らすようになってきております。
 (といっても、その体質のために、妖かしが寄ってきて危険な目にあうことは一向に減らないのですが)
 少しずつとはいえ友人達もでき、中には彼の体質を理解してくれる者も出てきて、かつてとは違い楽しい毎日を送っています。
 今回の物語では、その大切な友達の一人である「たき」の家が舞台です。たきの家の蔵の掃除を手伝っていた夏目は、偶然にも、そこにあった妖怪の封印を解いてしまいます。その妖怪退治を手伝ってくれるのは、「たき」の祖父の慎一郎と縁のあった妖かし達。彼らは、夏目と違い妖怪を見ることは出来なくても、彼らを見よう見ようとする慎一郎との間に種族を越えた友情を抱いていたので、なんだかんだといいつつも夏目たちを助けてくれます。大切な友達に囲まれ、幸せを感じる夏目。
 もう一つのお話のほうでは、夏目は、小さな頃に住んでいた家が売られてしまう事になり、かつて住んでいた家を見にゆきます。当時自分を育ててくれた遠縁の親戚のその後。普通のなりゆきでいえば、そこで見るもの、聞くものも苦しいだけの話になりそうなのですが、夏目の成長と日常の幸せがそれを乗り越えさせてくれます。
 
 いつも思うのですが、この夏目友人帳という物語は、読むとせつなさがこみあげてくると同時に、春の陽の日だまりのような暖かさを感じます。決して灼熱の太陽が照りつける夏の日差しのような強さや激しさはなく、時にごくごくかすかになりますが、それでもそこにある暖かさ、やさしさ、小さな幸せが読み手を幸せで優しい気分にさせてくれます。
 せつないけれど、優しい、落ち着いた気持ちにさせてくれる傑作少女漫画、それが自分にとっての夏目友人帳という作品です。幅広い層に是非読んでほしい作品です。絶賛お勧めです。

夏目友人帳 11 (花とゆめCOMICS)

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