小説・漫画好きの感想ブログ

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「フランケンシュタイン 野望」 ディーン・クーンツ著 感想 

 本年51冊目の紹介本です。
 タイトル通り、フランケンシュタインを軸にした物語なんですが、、、、たぶん皆さんが思うようなゴシックホラー色の強い本ではありません。フランケンシュタインを作ったヴィクター・ヘリオスマッドサイエンティストぶりが前面に出てきた、SF作品といったほうがいいような物語です。リーダビリティーもかなり高い本で面白かったので、ちょっと詳しくご紹介致します。
 舞台は現在。チベットの僧院から始まります。 
 デュカリオンと名乗るごく大柄な人物が僧院の中のごく一人の僧以外とは出会わない隠遁生活をしているところに、一通の手紙が送られてきます。その手紙に添えられていたのはアメリカはニューオリンズの新聞に移ったとある人物の写真。それこそは、200年前に死んだと思われていたヴィクターの写真であり、それを見たデュカリオンことフランケンシュタインは身体を雷に打たれたように震わせ、彼の地へと旅たちます。
 その頃、ニューオリンズでは猟奇的な連続殺人事件が発生していました。若い女性を殺し、身体の部分部分を切り取っていく「外科医」と呼ばれる連続殺人鬼が街を恐怖のドン底に突き落としていました。その事件を担当している二人の刑事、カースンとマイケルが一応の主人公になりますが、彼らはその連続殺人事件の新たな被害者と思われる人物の解剖所見を検死医から聞かされ、非常に驚きます。
 なんと被害者の身体には、心臓が二つあり、いくつかの臓器は人間にはないものがついているというのです。つまり死体は普通の人間ではないというのです。実はこの被害者こそは、200年前からしぶとく生き残り、研究を繰り返し続けていたヴィクターの生み出した新人類の一人だったのですが、二人にはそんなことはわかりません。ヴィクターは、この200年の間に研究をおしすすめ、人間より強力で身体機能も優れた新人類を大量に生産しており、いずれは彼らを現生人類と入れ替える計画を着々と実行中だったのです。彼らは、一般人に紛れ、政治家になり、商人になり、神父になり、と人間社会に既にずいぶんと根を張っていたのです。また、ヴィクターはそうして人類を入れ替えていくだけでなく、色々なニュータイプとも呼ぶべき人造人間を日夜実験により作り出していたのです。
 この事件をきっかけに、カースンとマイケルはデュカリオンと出会い、新人類の存在を知るのですが、、、、お話は、次巻以降に続いていきます。そして、ただ続くだけでなく、結構この物語はいろいろなテーマをモザイクのように突っ込んでいるので、群像劇のようになっていくのではないかと広がりを期待させる出来になっています。
 例えば、カースンの弟は自閉症の少年なのですが、彼に対して何故か運命的なものを感じてヴィクターのもとから逃亡する少年は、彼自身が人工的に自閉症にされた新人類ですが、彼の内面の葛藤がどうなってくのかというテーマも興味深いですし、先ほどちらりと話した神父である新人類は、自分が人工的に作られた存在で神などを信じていないし軽蔑していたはずなのに、いつしか信仰心のようなものをもっていたり魂を感じたりして悩みます。またヴィクターの妻として作られたエリカという女性は、自分が旧人類に対して、芸術に対して心が動くのをやめられずついにはプログラミング的には絶対にありえない創造主への反抗を起こします。
 こんな風にいくつかのテーマが各キャラクターにわりふられているこの物語はなかなかに先が楽しみです。ふつうフランケンシュタインものというと、愚鈍な怪物や、人工生命体に感情が宿って、、というようなシンプルな物語になりがちなのですが、いろいろなSF作品のガジェットやエッセンス、そしてそれ一本で作品を作れるようなネタを惜しげもなくあれこれ投入しているこの作品は非常に贅沢な作りをしていると思います。
 また、それと同時に一つの場面場面ごとに短い章立てがなされているので、他のクーンツ作品と比べても非常にリーダビリティーがよく、映像が頭に浮かぶよう描き方のせいもあって、すんなりと作品世界を楽しめます。
 続編がどれくらいのペースで出るのかがちよっと不明ですが、「トワイライト」のようにいいペースで続きが出ればブームになるかも知れません。それくらい面白いです。
お勧めです。


フランケンシュタイン野望 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-12)

フランケンシュタイン野望 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-12)

追記:フランケンシュタインといえば、日本だと怪物くんのイメージとポリス・カーロフのそれのイメージが強いかと思いますが、嵐の大野智くんがやっていた怪物くん、映画化の話題が出ていますね。

追記2:嵐の大野くん、漫画、実写化つながりでいくと、SMAPの香取慎吾・深田恭子コンビでこち亀、こちら亀有区亀有公園前交番も映画化だそうです。もう無理だと思うんだけれどなぁ。。。慎吾ちゃんもこれについてはそろそろ諦めないと。。。