小説・漫画好きの感想ブログ

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「五番目のコード」 D・M・ディヴァイン著 感想 

 本年34冊目の紹介本です。
 ひさびさの海外ミステリ紹介です。
 スコットランドの地方都市を舞台にした連続殺人事件の謎解きものです。少し前に紹介したイアン・ランキンの時にも書きましたが、どうもスコットランドは犯罪の多い街のイメージがミステリ的にはついてしまっています。
 さて。あらすじを紹介しますと、スコットランドの地方都市ケンバラで起きた一件の暴行事件から物語は始まります。被害者のジーン・ラボックはオールドミスのさえない高校教師で、おりしも事件当日の夜は、同じ高校の同僚のダンカンという教師に婚約者を紹介され恥をかかされて、一人寂しく暗い夜道を歩いて帰ってる途中を暴漢に襲われます。幸い、たまたま近くにいたカップルのおかげでラボックは一命を取り留めますが、最初は、物取りの犯行に見えたこの事件が、実は恐るべき連続絞殺殺人事件の第一の事件だったことを後に人々は知ることになります。
 彼女が襲われたときにその道路に落ちていた、棺の絵柄を描いたカードが、その次に起きた殺人事件の現場に残されていたのです。次の事件の犠牲者は、医師ビニーの奥さんでアリスという、身体が動かなくなって闘病生活を送っていた女性が絞殺されたのを皮切りに、次々と人々が殺されていきます。
 そして、この物語の主人公、ジェレミー・ビールドはこの事件を追いかけるケンバラガゼット社の新聞記者です。
 彼は、ごく普通に新聞記者として事件を追いかけ始めるのですが、自分も捜査線上の犯人候補に挙げられたこともあり、本腰で調査に乗り出します。しかし、このジェレミーという人物、普通の探偵役とは違って、少々私生活に問題があり、この事件の最中も色々と女性関係で悩みが絶えません。周囲からは冷たい目で見られる女性と半同棲して自堕落になる一方、元彼女で今は主人をなくして未亡人になっていヘレンに心奪われ何度もアタックを繰りかえしてはふられ続け、それでいて嫌々ながらも事件解決のために悪いと思いつつもジーン・ラボックの好意も利用します。職場でも、抜群の腕を買われる一方で、社主をはじめとして敵も多く、つねにクビの危険にさらされています。とうてい、普通の主人公のように自分のスタンスが確立して捜査に邁進するというようにはいきません。
 悩み、いじけ、屈折し、やけになり、女性とのことに一喜一憂して、言い過ぎたり、意に反したことを言ったり、会社で八つ当たりしたり、とまるで子供のようです。けれど、解説によればこうした主人公のスタイルというのが、このディヴァインという小説家の主人公のパターンだということで、悩み多い人格的に未成熟な部分の多い主人公が悪戦苦闘しながら事件解決に挑むミステリを読みたいという方にはこのディヴァインはベストなチョイスなのかも知れません。
 個人的には、セックスのみを求めて女の子をキープしながら、「これは堕落だ」「間違っている」などといいつつ、元彼女にあの手この手でアプローチを続けて、プライドはありながら気分次第で仕事をチョイスする主人公にはあまり感情移入しずらかったですが、これは好みの部分かなと思いますし、ミステリとしてはよく出来たものだと思います。
 
 

五番目のコード (創元推理文庫)

五番目のコード (創元推理文庫)