小説・漫画好きの感想ブログ

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「雑文集」 村上春樹著 感想

 本年28冊目の紹介本です。
 昨年は「1Q84」の大ヒット、そして年末の松山ケンイチによる「ノルウェイの森」の映画化で大いに話題をさらった村上春樹さんの最新刊です。
 村上春樹さんは、自分にとっての文芸的アイドルのトップにおられる方なので、なかなか客観敵な評価というのが出来ないのですが、これに限っていえば、ちょっと一般向けにはお勧めし難いなというのが正直な所です。
 というのも、海外の雑誌などに書かれたエッセイなども、どちらかというと文学者(作家)・村上春樹としての側面が強かったし、色々な小説の解説もしくはあとがきについてもファンでないとあまり興味をそそられない内容だったからです。ファン的には、春樹さんの文章を多面的に集めることが出来たし、お蔵入りしてこのままでは世に出ることがなかった文章が読めたことはコレクター的に楽しいものですが、そうでない人にとっては、もっと素の春樹さんがたくさん前面に出ている「そうだ! 村上春樹さんに聞いてみよう」であったり、旅行記としての傑作である「雨天炎天」や「遠い太鼓」のような作品、そして何はともあれ小説のほうが断然お勧めだと思います。 
 そういうことで、一般的にはあまりお勧めではありません。
 これは村上ファンのための贈り物、とそういう位置づけの本だと思います。
 マニア的には、トニー滝谷というのは実在の人物(小説の中のそれとは別人ですが)だったというくだりや、海外での彼の活動のあれこれや、公式な言葉として公式の場で発表された彼の言葉の数々は興味深かったのですが、、たぶん、一般受けはしないと思います。もし去年の映画で、村上春樹という小説家について興味を持たれた方がここにたどり着いてこれを読んでいるなら、小説なら「ダンス・ダンス・ダンス」や「羊をめぐる冒険」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」、エッセイや旅行記なら上であげたような諸作品がお勧めです

村上春樹 雑文集

村上春樹 雑文集


 追記:個人的な感想でいえば、話を蒸し返してしまいますが、あの「ノルウェイの森」は女性陣のキャストと脚本が本当にダメだったなぁ。誰か撮り直してくれないだろうか。原作を潰したダメダメっぷりでは大島弓子の「グーグーだって猫である」なみに酷い出来でした。