小説・漫画好きの感想ブログ

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「もえない」 森博嗣著 感想

 本年17冊目の紹介本です。
 森博嗣のノンシリーズ作品。
 高校生の淵田を主人公にした青春ミステリ。
 ある日、淵田と同じ高校に通う杉山が山で遭難して死亡した。本当に遭難死なのか、それとも自殺なのかはハッキリしないままに葬儀が執り行われ、淵田もそれに出席する。後日、杉山の父が学校に来て、息子を火葬にしたときにこんな金属片が出てきた、と淵田に彼の名前が刻まれた金属片を渡していった。淵田はさして杉山と親しかったわけでもないので首を捻るが、記憶をたどると昔彼からの手紙を受け取っていたことを思い出す。
 自宅でそれを探した彼は、まだ未開封だったそれを明けると、そこに自分の友人と山岸という女性の名前があるのを見つける。そして、その山岸という女性も自殺したことが分かる。淵田はなんだか奇妙な状況に戸惑いつつも、少しずつ友人とそこにある何かを探り始めていく。。。
 そんなあらすじのこのミステリ、森博嗣作品らしくヒートアップすることはなく淡々と進んでいく。はたから見ていると、主人公の置かれている状況はかなり異常で、精神的にも追い詰められていかなくてはならないように感じるが、当事者という感覚が麻痺しているかのような印象を主人公は与える。しかし、それすらもが伏線だと後半に分かるというのがこの作品のミソで、途中でところどころに感じる違和感が最後には過去のとある事件へと収束していく。
 計算されつくした、どこまでもクールなミステリは、まさに森博嗣らしいミステリといえる。
 ノベルズ版の表紙があまりに酷かったので読まずにいたが、これならもっと早く読んでおくべきだった。あの装丁は一体何だったのだろう?

こちらが文庫版

もえない  Incombustibles (角川文庫)

もえない Incombustibles (角川文庫)


 
こちらがノベルズ版