小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「姥捨ノ郷-居眠り磐音江戸双紙35巻」 佐伯泰英著 感想 

 本年15冊目の紹介本です。
 一昨年あたりから大ブームとなっている佐伯泰英氏の代表シリーズの「居眠り磐音」シリーズの書き下ろし最新刊です。
 前巻では、田沼意次の魔手を逃れ、江戸から尾張名古屋へと居を移した磐音とその妻おこん。尾張は御三家の一つ尾張徳川家の支配地だけに、いかに田沼意次といえども手を出しづらく、二人はしばし安住の地を見つけたのかと見えました。また、いかに佐々木道場の後継者とはいえいまや一介の剣士となった坂崎磐音と、飛ぶ鳥を落とす勢いの田沼意次では勝負にならないところを尾張家が手を貸すことで何かが生じるのだろうと予測したのですが、、、今巻で二人はあっさりと尾張を離れ再び逃亡生活に戻ってしまいます。
 その逃避行と、彼らの次の逃亡先への定住、おこんの出産がこの巻のあらすじとなります。あっさりとネタバレしてしまうのには訳があって、今回は正直ストーリーそのものにはあまり捻りがなく、話的な盛り上がりというのも殆どなかったからです。せっかく、二人の赤ちゃんが生まれるという大きな転記があるのだから、もっと色々と盛り上げても良かったでしょうし、なんだか淡々と進みすぎたような気がします。
 強いて言えば、彼らが逃亡した先で見た景色。美しく、人生でもう一度生まれ変わったように感じられた風景景色がちょっと荘厳に感じられたくらいで、剣客物語としては少し食い足りない気がした巻でした。
 ひょっとしたら、さきに書いたようにあまりにも力が歴然とした磐音と田沼意次の戦いに、佐伯氏ご本人がいまだ道を見つけられていないのかも知れません。田沼意次は歴史上の人物ですから、死ぬ日時・場所や状況も分かっているわけで、それと整合性を持ちつつ、うまい決着をつけるのは大難時だろうと思います。それだけに、それだったら、無理に刊行ペースを守らずとも(だいたい季節の変わり目ごとに新作が出る)いいから、ご本人が納得する筋が決まった段階でどんどん物語を動かし始めていただいてもいいのではないかな等と長い年月のファンだけに思ったりもしました。
 

姥捨ノ郷 ─ 居眠り磐音江戸双紙 35 (双葉文庫)

姥捨ノ郷 ─ 居眠り磐音江戸双紙 35 (双葉文庫)