小説・漫画好きの感想ブログ

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「なにかもちがってますか」 鬼頭莫宏著 感想 

 本年9作目の紹介本です。
 「なるたる」や「ぼくらの」の、鬼頭莫宏さんの新連載コミックです。掲載誌は、good! アフタヌーンです。
 初読みの漫画だったので、内容はほとんど知らずに買いました。
 作品キーワードが「超能力+正義+人を殺す」となっていたので、デスノートみたいな内容の漫画を予想していたのですが、これが大きく予想と違いました。キーワード通り、急進的な正義についての考え方をもった一社という中学生は出てきますし、サイコキネシスを使えるようになる日々野という主人公も出てくるんですが、デスノートのライトのようなちょっといかれた正義の知能犯の物語にはなっていません。
 あの漫画の主人公であるライトは、「新世紀の神になる」と宣言するほど徹底して自分自身と自己の信念に自信をもっていましたし、自分の正義を貫くためには家族であれ恋人であれ誰でもその手にかける殺人鬼的な側面をもっていました。ノートという能力をきっかけに、自ら破滅へと向かっていくある意味恐ろしい物語でした。
 しかし、この物語の主人公には、そのような強さはありません。むしろその逆に、どちらかというとシチュエーション的には状況にずるずると流されていくままに人を殺してしまうタイプの人物です。ごくありふれた中学生が、そそのかされ、能力に目覚め、そんなつもりがなかったのに人を殺してしまい、そのあとは罪の意識をもちつつも、いつのまにか人を何人も殺してしまうというお話です。
 やっている内容は同じでも、「考える人間」と「実行する人間」が同一人物ではなく別人であるとここまで話はかわるのかというくらいかわります。そして、そのどちらが恐ろしいのかといえば、実は後者であるような気が僕はします。
 狂気に満ちたヒトラーや、自分に自身をもって世界を統べようとしてナポレオンの狂気よりも、上層部にそそのかされて無自覚に人を殺し続ける一兵士が実は超人だったというほうが実は恐ろしい事態を生むのではないかと考えたりもしました。
 もっとも、絵柄がわりあいとかわいらしいタッチのものなので、読んでいる時はそんな風には思いません。むしろそういう人が簡単に死んでしまったり、間違いでクラスメートを殺してしまったりするような恐ろしい話なのに、シーンシーンでの主人公の葛藤や自己嫌悪や恋愛感情に微笑ましいものを感じたりさえします。
 そして、そのギャップがなかなかに深い味わいを生み出していたりもします。
 ともあれ、そういうストーリーなので先が読めず、次の展開が楽しみで続刊がとても待ち遠しいです。

なにかもちがってますか(1) (アフタヌーンKC)

なにかもちがってますか(1) (アフタヌーンKC)


追記「なにかもちがっていますか?」というタイトルは間違っていません。「なにかまちがっていますか?」ではないのでご注意を。