小説・漫画好きの感想ブログ

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「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」佐藤賢一著 感想 

 佐藤賢一の文庫新刊です。歴史短編集です。
 タイミング的に、堀北真希さんと伊藤英明さんの舞台「ジャンヌ・ダルク」の公演がある時期なので、それにタイミングをあわせての文庫平積みというところでしょう。
 内容的には、表題作の「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」はそのままジャンヌ・ダルクの物語です。ジャンヌ・ダルクというのは、そもそも何ものだったのか。ドレミ村生まれのジャンヌ・ダルクもしくはジャンヌ・ロメという一個人だというのは間違いないにしろ、本当の正体は何者なのか?  誰かの落としだねではないのか? フランス王のシャルル7世は、何故彼女に劣勢の中で一軍を与え、動かしたのか。これは単に神の啓示と言うだけではなく、ジャンヌと王の間に何らかの関係がもともとあったのではないか。しかし、それならば、虜囚の憂き目にあったジャンヌを何故王は見殺しにして、身代金すら払わなかったのか? そういうミステリーを追いかけていく物語です。実際問題、この当時の戦争では、有名人物や貴族などは戦争中に殺されることはほぼなく、捕まえられれば身代金というか釈放金を家族か関係者もしくは軍が払えば解放されるので、大物であれば敵地で捕まっていても連日宴会をしているというのがごく当たり前だった時代ですから、このジャンヌ・ダルクの放置というのは歴史的な謎なんですが、ここをネタにしたお話です。
 あとは、「エッセ・エス」というスペイン誕生のきっかけになったカスティーリャアラゴン王国のむすびつきに絡んだお話。意外とこういうラブロマンスに弱かったりします。短編ながら、なかなかに趣がある話です。
 あとは、レオナルド・ダ・ヴィンチの飛行機実験の話、戦争に行く前に戦争兄弟として神の前で誓約書を作った幼なじみの話、などなどいくつかの短編が詰まっています。佐藤賢一だけあって、安定した手堅い短編集です。

 ところで、、ジャンヌダルク堀北真希といえば、、堀北真希さんの自転車が「ジャンヌダルク号」という名前をつけられていたというような話をきいたことがあります。どこかで彼女とジャンヌダルクは運命的につながっていたのかも知れませんね。

ジャンヌ・ダルクまたはロメ (講談社文庫)

ジャンヌ・ダルクまたはロメ (講談社文庫)