小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「豆腐小僧双六道中 ふりだし」 京極夏彦著 感想

 仙石・sengokuの話のあとに、妖怪の話というのも不謹慎に映るかも知れないが、曖昧模糊とした事件の様相や張遼跋扈する自民党・民主党の議員達のあやしい動きは百鬼夜行のようであるし、中国・韓国の一部のおかしな人たちが国籍やイデオロギーをうまく偽装してうろいている様は鵺のようでもあって、強引にまとめれば今の日本は妖怪がうろうろしている国でもあるから、案外ちょうどいいものかも知れない。
 ま、かなり、強引なまとめと前ふりはさておき、『豆腐小僧』である。京極夏彦の単発の妖怪ものである。妖怪といっても、主人公は豆腐小僧という、きわめて何の役にもたたなければ怖くもなんともない実害のないキャラである。大きな頭の童子型をしており、手にはお盆の上にもみじ豆腐が一丁。これをもってうろうろするだけの妖怪である。たまに、その豆腐をなめたりもするが、なげつけてくるわけでも、無理やり食わされるわけでもなく、人畜無害な妖怪である。
 この妖怪を主人公にしての冒険道中が本書だが、このお話の中では、というか京極夏彦の描く世界ではたいていがそうだが、妖怪は人間に本当の意味では何も害を与えない。むしろとある現象の説明やら仕組み、解釈のために妖怪というのが存在しており、人間がそう感じるから何もないはずのそこに妖怪が存在するというスタンスで、本当のことをいえば妖怪というのは別に違う次元の生き物でもなんでもないという設定である。しかし、その設定であるにも関わらず、ここに出てくる妖怪たちは存在感があり、生き生きとして楽しい。
 まるで、よく出来た落語を聞いているように楽しめる。
 さすがにずいぶんと分厚い本なので、途中何箇所かだれてくるところはあるが、前半の豆腐小僧登場あたりから、こっけい達磨との禅問答などはなかなか面白くて、読みながらくすくす笑ってしまったほどだ。妖怪同士のかけあい漫才、おふざけがここまで楽しくなるんだから、わからないものである。登場妖怪は分厚さのわりには意外と少なめだが、主人公の豆腐小僧に加えて、鳴家、納戸婆、袖引き小僧、お稲荷さんの眷属一党、お狸さんの眷属一党、滑稽達磨に、化け猫、見越し入道、ろくろっ首とマイナーからメジャーどころまで多々出てくる。個人的には、豆腐小僧というのはまったく知らなかった妖怪だが、ネットをあさってみると、2002年頃には以下の引用記事のようなことになっていたらしい。
 ところで、この本、読んでいて気になったのだが、文庫化に際してところどころ手をいれているかも知れない。自民党と民主党の瓦解だとか、手当ての支給などというやけにここ数年の話題がいれられているから、ひょっとしたらハードカバーからちょっと変化しているかも知れない。
 この京極夏彦という人は、文庫のときに文章がページをまたぐのがいやだとかいう理由で文章を作り変えたりする人だから十二分にありえるがハードカバーまで引っ張り出してはこれないので気になる人はご自身でチェックを。

 (2002年頃)そして、今、豆腐小僧は、いろんなところでとりあげられていて、大蔵流狂言の茂山一門は新作狂言「豆腐小僧」を、せなけいこさん という方は、異質な存在を避け、怖がるのではなく、むしろ面白がり、温かく仲間に受け入れてほしい。というメッセージを込めた「とうふこぞう」という絵本を 平林浩一さんというミュージシャンは豆腐小僧復活を願うロックバンド「妖怪プロジェクト」をつくり、「魂(ソウル)豆腐小僧」「一丁おくれ」などの曲のCDをインディーズで発売、とのこと。 はたして、豆腐小僧は大きなブームになるのだろうか?

はてさて、ブームは来たのでしょうか?

文庫版  豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)

文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)