小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「プレイバック」 レイモンド・チャンドラー著 感想 

 タフでなければ生きていけない
 タフでないければ生きている資格がない
 ご存知、名探偵フィリップ・マーロウのこの台詞が出てくる作品は、このシリーズの最終作品となります。ずいぶん昔に読んでいた(かれこれ二十年前くらい)はずなのに、ストーリーもプロットも細部も綺麗に忘れていた本作。
 読み返してみたのですが、ものすごく違和感がありました。
 自分の中では、タフガイで紳士でハードボイルドの代名詞であるマーロウは、依頼人ともほぼ寝ないし、事件はしっかりと解決するし、よく頭を殴られて気絶するという欠点はあるものの、それ以外の部分では探偵としてすごく切れ者というイメージがあって美化されているのですが、、、今回のマーロウはそういうイメージがまるでありませんし、情におぼれるし、色々な女の人とつまりはそーいう関係になっちゃうし、依頼もグダグダだし、事件も解決というほどたいしたところがないし、なんだか別の作品を読んでいるようでした。
 権力や暴力に屈しない、どんなピンチでも軽口をたたいて、自分の腕だけを頼りに真実にグイグイ迫るというかっこよさはなく、、なんかもうヨレヨレで行き当たりばったりで、ブラインドで名前を変えられたらマーロウものだとは思わないだろう作品でした。
 これ、自分の感覚がかわったのかと思っていたのですが、解説を読むと、そうではなくて、やはり他の方も皆そう思った作品だったようです。なので、あんまり正直お勧めではないですし、フィリップ・マーロウを未読の人に読ませるなら避けたい作品です。
 今なら勧めるなら、やっぱり村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」のほうになるのかな。と思います。
 
 余談ですが、先日お気に入りのバーで、ギムレットを注文した際の話。
 その村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」と清水俊二訳の「長いお別れ」とどっちがいいかという話をしていたのですが、バーテンダーさんが曰く「村上春樹さん訳では、午後四時のちょっと早い時間にギムレットを飲んでいるという感じがちょっと出てない」と。なるほどな、とすごく納得した次第でした。