「キノの旅 14」 時雨沢恵一・黒星紅白著
今回の「キノの旅」はいつにも増して、シニカルです。
パースエーダー使いの少女が、色々な国に三日間だけ滞在して旅を続けるという基本コンセプトはしっかり守りつつ、今回は今まで以上に寓話的要素と皮肉を強化しています。
友愛を信じて、国のまわりを取り囲む壁をすべて取払い、周囲の国と仲良くしようとする国が出てくるのですが、、これに対して作中のその国の人はいいます。どう考えてもおかしい、と。みんなが賛成することがおかしい。必ずこの国は滅ぼされる、と。
まぁ、言わずもがなですが、日本の元民主党代表、某鳩山元首相のことを痛烈に皮肉っております。
個人的には、理想は素晴らしいけれどやり方がちょっと拙劣だったかなという風に思う民主党政権のことを、これでもかとばかりに暗に非難しております。果たして、この作品が、というかこの短編が十年後、二十年後、これはあの当時のあれのことかと感慨深げに振り返られるのか、それとも、この時代があの不幸の始まりだったのかと物悲しく思い出されるのか、それとも、この時代が素晴らしい世界の入り口で当時はまだまだ受け入れられなかったんだなと微笑をもって懐かしく思い出されるのか、それは後世の歴史に委ねるしかありません。
ただ、そういうことをこうした小説、わけてもライトノベルでさらりとやってのけられるとライトノベル、文学ってやっぱり捨てたもんじゃないなと思うし、政治の話も、なにも難しい言葉を使わずとも説明することができるんだなとも思いました。この「キノの旅」っていう小説、ぼちぼち十年以上のおつきあいになりますが、いつまでも飽きさせずに楽しませてもらっています。
追記:ライトノベルといえば、鎌池和馬と灰村キヨタカの「とある魔術の禁書目録」は累計で1000万部を売り上げたようですね。アニメの方しか見ていないですが、確かに面白いですね、あれも。SFとジュヴィナルとオカルトと社会学がうまくごちゃ混ぜになってなおかつラブコメと盛りだくさんですからね。
キノの旅 14―the Beautiful World (電撃文庫 し 8-33)
- 作者: 時雨沢恵一,黒星紅白
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2010/10
- メディア: 文庫
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