小説・漫画好きの感想ブログ

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「花詞 梟与力吟味帳4」 井川香四郎著 感想 

 梟与力シリーズの第四作です。
 北町奉行所の与力・藤堂逸馬と、評定所の武田信三郎、役職を転々とする下級旗本の毛利八助。この三人が活躍する人気時代劇シリーズの第四作です。「花詞」「別れ霜」「東風吹かば」「やじろべえ」の四作を収録。それぞれが、主人公達を話の中心や狂言回しにした作品になっています。
 一話目が、藤堂逸馬を主軸に据えた詐欺の事件。事件をおいかけるうち、この三人がよくいく行きつけの小料理屋の主人にして、北町奉行遠山金四郎の愛人とされる女将の過去とつながった、ちょっと哀しい人情話。
 二話目が、武田信三郎が関わったけが人が、医者のもとへ運んだものの死んでしまったことに始まる一番本格的なミステリ。このシリーズの中でも結構本格的な推理物のほうで、気にいっている作品。プロットがものすごくしっかりしています。
 三話目は、毛利八助が上司の大身旗本に呼ばれてみれば、その依頼が愛人をうまく匿って自分の愛人のように見せかけて欲しいというちょっとコメディタッチの話。もちろん、その愛人のおみつを中心にして、宿敵ともいうべき鳥居耀蔵が絡んでくるという筋立て。
 最後の四話目は、武田信三郎の父親が濡れ衣で捕まった話の影に、鳥居耀蔵がいたという話で、この話に母親が過敏反応して、、という話でこれまた当時の時代背景を感じさせる作品です。
 時代は変わりますが、田沼意次のような絶対悪に近い感じで描かれている鳥居耀蔵が少しだけ哀れにもなってくる作品です。たまには鳥居耀蔵がいい物というか誤解されやすいけれどしっかりとした理想家だったというような話があってもいいかなと思うのですが、いかんせん、南町の鳥居耀蔵に対して北町に遠山の金さんこと遠山様がいるとどうしても割をくってしまいますよね。物語的には、善と悪にしたほうがわかりやすいですから。強いて、彼が例外的な扱いを受けているのを探せば、宮部みゆきの「孤宿の人」でしょうか。

花詞 梟与力吟味帳 (講談社文庫)

花詞 梟与力吟味帳 (講談社文庫)