小説・漫画好きの感想ブログ

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尖閣諸島問題 日中戦争まで見据えて 

 こんばんは。
 尖閣諸島問題、かなり気になっていますし、日本国内が変なナショナリズムな雰囲気になりつつあるのが肌で感じられてちょっと恐ろしい感じさえします。ひょっとしたら、第二次世界大戦に突っ込んでいく前とか、大東亜戦争に行く前とかはこんな感じだったんじゃなかろうかいう気さえします。
 さて。
 私が気になってやまない点は一つ。日本人は客観的に自分を見る目を失いつつあるんじゃなかろうかということです。

 たぶん、日本の多くの人々は、今回の中国漁船の拿捕・船長の逮捕から始まる、中国の一連の行動をさぞや不快に思り怒り心頭でいることしょう。1万人からの日本への社員旅行を中止、駐中大使を呼びつける無作法、人材交流のキャンセル、SMAPのコンサート中止、大使館への抗議デモ、国旗を燃やす行為、こういうのをみて不快になるなというのが無理な話だし、心情としては私も多くの日本国民と同じです。
 ただ、怒りの前提はこうですよね。
 尖閣諸島という日本領内で不正操業をして、なおかつ警備艇に体当たりして逃げようとした乗組員を逮捕し、日本の法律で処罰しようということにどこからどう見ても日本に非はないだろう、と。なのに、尖閣諸島を釣魚島と呼び自分たちの領土というなんて、なんて無茶苦茶な国だろう、と。

 しかし。
 しかしですね。たぶん同じことを向こうも思っているのです。連日日本のマスコミでは、日本と中国には領土問題などない、あれは昔からずっと日本の島で中国も認めていたはず、と言っています。だからこそ、日本が自国の領海内で外国の犯罪船を自由に捕まえていいと言っています。
 しかし、この島は昔から領土問題の島なんです。現実問題として、日中平和友好条約を結んだときに、この尖閣諸島のことも出ております。しかし、そのときにはこの島のことを話の遡上に乗せると両国間に取ってうまくいかないから、これはたな晒しにしておいて、あえて触れないことで両国ともに置いておこうという話になっています。つまりは、このとき、領土問題になる島だということは両国とも認識していたのです。だからこそ、あの島は、日本から見たら日本領、あちら中国から見たら中国領になるけれど、どちらの国も無人島のまま放置し、基地もおかなければ防衛隊も置いていないのです。
 しかし、そこから40年近く放置してきていますから、どちらの国民も、お互いに暗黙のうちに、あるいは両国政府のこっそりのプロパガンダのもとに、「あれはうちの領土」と思い込んでいるわけです。だからこそ、中国の一般国民は、日本人が「うちの領海内に勝手にはいってきて勝手なことを言うな」と思うのと同じかそれ以上の気持ちで「うちの領土に入ってきただけでなく、漁民を連れて行くなんてなんていう事だ」と怒り狂っているのです。
 テレビやマスコミ報道を見ていると、中国や中国一般国民が無知、あるいは無知を装って人の領土を取ろうとしている、軍事的に恐ろしいことをしようとしていると感じさせられますが、同じことを相手も思っているだろうということに誰一人言及しないのが恐ろしいことだと僕は思います。
 そして、日本政府も中国政府も本音をいえば、ここの問題には触りたくなかったのに、ことがこうなってしまった以上、どちらも自国民向けの顔と面子(特に中国は)のたに折れることができずに意地の張り合いになってしまっているのが現状で、日本にとっても中国にとっても本音でいえばこれはすぐに沈静化・解決しなければならない問題なのに、そうならずどちらにとってもマイナスになっているというのが事実です。
 そう考えていくと、この今回の逮捕劇。 
 日本のやり方もあまり上手くなかったなと率直に思います。
 過去に、この尖閣島に中国人が入ったときは、日本政府は彼らを「不法入国」とかで逮捕せずに「強制退去」にしています。それに対しては中国政府も事を荒立てないように「我々の国に我々の人民が入って何が悪い」とか騒がずにそのまま引き取っています。つまり、先に述べたように、どちらの国の政府も本当はややこしくしたくないと思っていたのです。
 それが今回の逮捕劇では、最近の中国に思うところがあったのか、マスコミがそれこそ国益とかを考えずに派手に騒いだがために、向こうも引くに引けなくなってしまったという感があります。 
 特に、日本人はそれでもまだ冷静に事態を眺められますが、あちらはそうはいきませんから、今回のこれはこうなった以上、日本も簡単に譲ることは出来なくなってしまいましたが、本当は日本の初手がちょっと失敗したのではないかなとも思います。本当の国益というもので考えれば、この秋からの中国からの観光客が大量に落としたであろう観光マネーや、その中で持ったであろう日本に対する親しみの念、こういう天下国家百年の計でみたら必要であったことが、今回の一軒で簡単には回復できないところまで冷めたことは残念でなりません。
 また、両国民が事の本当のところを知らないがために憎みあうのは馬鹿馬鹿しいと思います。
 もちろん、僕は日本人だから日本寄りの心情です。
 しかし、中国人が怒り狂っているのを「あいつらはおかしい」と斬って捨てることができませんし、ああまでなっている原因を理解しようともしない、或いは敢えて伏せたままにしている日本のマスコミのありように激しく失意を覚えるほうが強いです。
 「そんなこと言ったって、中国人が勝手に漁業をするから」という人もいるでしょう。しかし、そういう人たちは、あそこは昨日今日に始まったことでなく、どちらの国の漁船もいて、中国の漁船なんて前々から大量に普通に漁をしていることを知らないのではないでしょうか。あちらから見たら、今まで普通に黙認していて(或いは自分たちの国の領海だと信じて)いたら、いきなり捕まえられたと思っているということを想像したりは出来ないでしょうか? 北方領土付近では日本の漁船がよくロシアにつかまりますが、「許せんな」と思ったことはないですか? 同じことを中国人も思っているのでしょう。
 また或いは、「そうは言うが、ODAをさんざん日本に貰っておいて、そんなんなら全部返せ」といきまく人もいるでしょう。しかし、それも筋が違う話で、日本は中国を侵略したことは間違いがないわけですが、日中平和友好条約締結にあたり、中国はその戦後賠償を放棄して、そのかわりにODAをはじめとした援助を受けることにしていますから、あちらの中では戦後賠償=ODAという認識があり、ODAは援助ではなくて払わせるべきお金でしかないということも正しく認識しておかなくてはなりません。ODAを返せというのであれば、戦後賠償をしなおさなければなりませんが、、、そのほうがとんでもない額になるのは間違いありません。
 でも、ネットやテレビの論調では以上のような中国憎しとまでは言いませんが、今回の件は中国が一方的に悪であり、一昔前のように中国人を蔑む言葉があふれかえっていますし、中には石原慎太郎都知事のヤクザのようだといいきり挑発する人までいます。
 
 しかし、彼らには、今日僕が書いたようなことを知っていて話てしているのか? 知った上でなお煽りをいれて両国関係を潰したいと思っているのかと問いただしたいです。
 中国を醜いという前に、事実関係を整理して、「あぁなるほどそういうことか」と理解したうえで、「いやいや中国さん、それは一方的すぎて話が違うだろう。冷静にきちんと事実を積み上げてどちらの国にとっても利益がでるようにいこうよ」とどうして言えないのかと。好き嫌いを言ったって、隣同士の国なんだから、無視しあって生きるわけにはいかないし、アメリカ偏重の世界はもう無理なところまで来ています。であれば、国防に予算をさけない/また割ける余裕もない日本としては、しっかりと対話することがまず優先されるべきだし、国民の民度ということであれば、まだ客観的にみれば日本のほうが上なのだから(あちらにはあちらの言い分がありますが)大人な対応で話をすべきだと思います。それは仙石官房長官のようにとりあえず中国の機嫌を取ってということでもなく、前原外務大臣のようにとにかく強硬にというのとも違います。真摯な話合いです。
 今回の尖閣について全くアメリカが動こうとしない、或いは「お互いに話し合ってね」という路線でいくなら、なおさらきちんと将来のことも含めて日本は考えるべきだと思います。
 むろんのこと、短絡にアメリカを切って中国と手を組めなんてことを僕は言っているのではないですよ。
 ただ、思った以上にアメリカが頼りにならない、約束通りのことをしないのであれば、腰をすえた外交をしなくてはと言っているだけです。
  
 ということで、話を元に戻しますが、僕は今の日本のこのマスコミと、それから流れる情報だけを見て過去のごくごく普通の歴史や事実を見ずに、相手を全否定していく国民の意識がちょっと怖いなと思っています。ただの杞憂であればいいのですが、日本も不景気が続いて若い人たちも含めて閉塞感にすすまれ捨て鉢になっているように見えますし、事がこうなったときに「国益のため」だから、旅行業界、観光業界は我慢しろ、中国人や韓国人はまとめて排撃してしまえという論調が普通に恥ずかしくなく出される世間と、その扇動をする無責任な人たちにネオナチにも似た恐怖を覚えます。
 威勢のいい事をいうのも、戦争を唱えるのも各々の考え方の自由です。 
 どうしても戦争になるというのなら、避けられないのだとしても、そこに至るまでに出来ることはすべてするべきだし、勝ち目のない状態で、あるいは勝っても国土が荒廃するような中で戦争に進んでいくのは愚か者のすることです。
 いざ戦争になったら、アメリカがもし助けにくるにしてもそれまでに原子力発電所にミサイルでも打ち込まれたら、そうしたらまた泣くのは女子供であり多くの高齢者なわけですよ。乱暴なものいいになりますが、一つの島の周囲の漁業の問題で、何百万人という人命が両国で失われたり、将来にわたって被爆で影響が出たり農作物が取れなくなったりということをすべて理解した上で、戦争でいいじゃん、国交断絶、中国人なんて死んでしまえなんて言っているのか、そう聞きたいものです。
 
 また、これは杞憂であって欲しいし、たぶん大丈夫だとは思いますが、海保のビデオテープというのを我々日本人を含めまだ誰も見ていない状況というのはどちらの国にとっても不安定要素です。
 これを一刻も早く見せた上で、真摯に両国がテーブルにつくべきだし、その為には意味のない煽りをすることは厳に慎むべきだと思うのですが、皆さんはどうお考えですか?