小説・漫画好きの感想ブログ

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「薄妃の恋―僕僕先生」 仁木英之著 感想。

 何千年生きているかも本当の性別すらもわからないが、ふだんの外見は美少女仙人の「僕僕」。
 そして、その旅のおともをしている、見習い仙人(といっても仙骨がないので仙人にはなれない)の王弁。
 この二人の中国不思議旅物語がいよいよ帰ってまいりました。このシリーズ、全体がほのぼのとしていて、それでいてちょっと甘くて、浮世離れしていてお気に入りなんです。なので、そんなお気に入り作品の続編が文庫化されていくというだけで嬉しくなってしまいましたので今日の紹介はベタ甘です。
 さて、本編紹介に戻ると、2年前に別れを告げた僕僕を待って地元で薬師のようなことをしている王弁のもとに、僕僕先生が帰ってくるところから物語は始まります。いつものように乱暴でわがままで魅力的で人をからかうのが好きな僕僕先生に恋心を抱きながら、下僕のように付き従う王弁。前作とは違って、2年の空白時に語られないエピソードがいくつかあったらしく、少しは常人以上の通力をつけている様子の王弁ですが、先生の前だと例によって例のごとく子供のようにからかい戯れの対象にされてしまいます。何かといえば、やれあれをしろ、これをしろ、次はあそこへ行け、この事件を解決せよと休むひまなく雑用三昧にこき使われるのに加えて、底なしの酒飲みの先生に付き合わされる王弁。惚れた弱みでそれでも嬉しい王弁にとっては、先生への恋心や、下心もすべて心を読まれてしまうのですから、その苦労は推して知るべしなのですが、今回はそんな旅に新しい仲間が加わります。タイトルにも出てくる薄妃というのがその人物? です。ネタバレしちゃうと面白くないので、その正体は触れませんが彼女が加わることで二人の旅だと陥りがちな単調さが改善されていて物語としての楽しみも増えたのではないかと個人的には思います。
 また連作短編集的な構成の中で、少しずつ巨大な勢力というか神仙の存在も示され始めているので、これもこのシリーズが長期化していくネタフリとしてはなかなかによいのではないかと思いました。

薄妃の恋―僕僕先生 (新潮文庫)

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