「銀二貫」 高田郁著 感想
二貫、というからてっきりとおすしのお話かと思ったら、これが意外にも羊羹生誕のお話。
大阪の北野天満宮が大火で消失したおり、大阪商人たちは、その再建に懸命に頑張っていた。大阪商人たちは、現在もそうだが大変に信心深く、自分たちのあるのも神仏の加護によるものと、いざこういうときにはそれぞれのお店があらん限りの助成を神様や仲間へと誓約してことにあたるのだ。この物語の主人公が、縁あって銀二貫の対価で引き取られることになる井川屋という寒天問屋もそうしたお店の一つだった。
主人公の松吉は、最初の登場時には武士の息子なのだが、そのとある一件を機にその身分を捨てて丁稚奉公をすることになる。はじめは、天満宮の再建にかける費用を彼のために使われた番頭からも厳しくあたられ、丁稚奉公先での暮らしが辛いと感じるところも多かったのだが、松吉はいつしか立派な寒天問屋のお店者となっていく。。。
そんな中で知り合った、真帆という料理屋の娘との数奇な縁のロマンスも含め、物語のどの部分もしっかり丁寧に語られており、さすがは「みおつくし」シリーズの作者の一作と高く評価できる出来。文句なくお勧めできます。
まるで、一昔前の大阪の丁稚を主人公にした昼のドラマを見ているように楽しめます。
諸説あるうちの(我々が今見ることのできる)羊羹の誕生の物語も、この説のような努力と出会いの賜物であればうれしいことです。
ところで、ちょっと話はそれますが、最近は「嬉八州」というお店の「きんつば」にはまり気味。きんつばって、へたなとこが作るとあますぎて食べれないものになりますが、ここのはとても美味しいです。けっこうボリュームのあるつくりなんですが、小豆の甘みがとても上品で、まわりの薄皮のしっとりさと絶妙の取り合わせで美味しいのです。お取り寄せもしているようですので、和菓子好きなら是非一度。
- 作者: 高田郁
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/08/05
- メディア: 文庫
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- ジャンル:和菓子
- 住所: 豊中市庄内東町1-8-8
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