小説・漫画好きの感想ブログ

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「サイボーグの夢 宇宙英雄ローダン・シリーズ 381巻」  ハンス・クナイフェル、H・G・エーヴェルス著

 一子相伝で読み継がれていく、ドイツが生んだ超大河SFのペリー・ローダンシリーズ最新刊です。
 最近十年ほど読み飛ばしていて、今ではすっかりとご無沙汰していたペリー・ローダンをひさびさに読んでみました。
 このシリーズのいいところは、しばらく読んでいなくても、作品の中での時間があっという間に流れて、一つの巻でいきなり「あれから時は流れて二百数十年」なんてことをやってくれるので、そんなに厳密に一巻からしっかり読んでいなくてもいいところ(そのあたりがグイン・サーガとはちょっと違うかな)ですので、そのメリットを生かして読んでみたのですが、、、、それにしてもずいぶんと遠いところへ時代も文化も飛んでおりました。。。。
 なにせ、アトランとローダンが対立している!
 しかも地球は既にない! 
 地球人が各銀河に移住し、そこの宇宙人たちと作っていた銀河連邦、地球帝国が瓦解している!!
 と、わからない人にはさっぱりわからないだろうし、百巻程度のところでとまっているローダン読みからすると、かなり衝撃的な展開になっておりました。いやぁ、時代は流れるものなのですね、しみじみ。1巻ではまだ西暦2000年前後だったものが、もうすでに西暦3500年頃に舞台は移っているのですから、当然っちゃ当然なのかもしれませんが、大変革です。
 
 でも、作品内容自体は案外古典というかオーソドックス、タイトルにあるようにサイボーグが主人公のお話。生殖機能を除けばほぼ人類同様に作られたムサイというサイボーグ(サイボーグっていうものの一般定義からすると?な訳だけれど)たちが、アトランの陰謀で、自我に目覚め、自分たちは人間とかわらない存在であると主張しはじめて、奴隷解放のようなものに立ち上がるというお話。
 そもそもはアトランは彼らを味方につけて世論操作しようとしたのが、かえってやぶへびな事態になるという筋立てですが、、奴隷が奴隷であることからの脱却を別勢力に頼るというのがかつてどこかで歩んできた道のようで、、、なんだか妙に政治風刺な感覚を受けました。悪い意味でいえばちょっと古い、いい意味でいえば王道の問いかけ。ローダンってこういう楽しみ方もあったのかと違うところで感心するお話でした。
 さーすが、百数十巻のところから読み直そうとは思えませんが、たまにパラパラ読むのにはいいかなと思います。ローダンって、日本では毎月一巻しか出ませんが、本国ではその倍出ているということですから、あちらでは、760巻あたりになっているということで、、、こりゃあ死ぬまでかかっても現時点のドイツ版には追いつけなさそうですが、、たまにまた読んでみようかなぁなんて思ったりしました。

 巻末に、太陽光発電をつけたんだけれど、地球を救うのは太陽光発電だ、なーんていう話と、SFの世界で太陽光システムが出てきたのはいつ頃が最初?? なんていう記述がでてきます。言われてみれば、太陽光発電なんてSFで読んでた未来システムが現実化したものですよね。小惑星イトカワにいった「はやぶさ」が積んでいたイオンエンジンだとか、太陽風を受けての航法システムなんかもすごくSFっぽいですよね。なんだか不思議な気分です。

サイボーグの夢 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-381 宇宙英雄ローダン・シリーズ 381)

サイボーグの夢 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-381 宇宙英雄ローダン・シリーズ 381)