小説・漫画好きの感想ブログ

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「スペース」加納朋子著 感想

 去年たしか入院しているときに買ったはずだが、すっかり忘れて今回新刊と勘違いして購入。
 読み始めて途中で気づくという大ボケだが、過去記事を探してみたが、まったく記述がなしなので、改めて。
 この本、加納朋子さんの「ななつの子」に連なる一連の日常の謎系ミステリで、主人公は女子大生の女の子、彼女のあこがれの人は近くのいろいろなところでバイトしている瀬尾さんというミステリアスな天体好きの<探偵>さん。特段、職業が探偵というわけではないだが、主人公の差し出す謎に反応して事件を解決してくれる不思議な人です。
 このあたりの立ち位置が北村薫の「<私>」シリーズに近くて、より主人公達の距離感から恋愛ものでもあり、という好評シリーズです。今までは連作短編だったのですが、今回のこれは、手紙を使った叙述トリックを使った中編もの。主人公のけなげさと、手紙の中に出てくるとある女性と男性のドラマチックな出会いに、胸がぐっときてしまう一冊でした。
 そんなご都合主義な、という人がいるかも知れませんが、都合の悪い恋愛なんてのも世の中にないもの。嘘とわかってこの甘いスイーツのようなミステリを味わってみるのも一興ではないでしょうか。

 

スペース (創元推理文庫)

スペース (創元推理文庫)