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「街場の大阪論」 江弘毅著 感想

 大阪の街論。
 というと、ものすごく堅く聞こえてしまうでしょうが、とある大阪の食べ物関係のプロが見た、感じた大阪についてのエッセイ的なお話というところ。ただね、この本、共感できる部分とそうでない部分がものすごくハッキリ分かれてしまうんです。例えば、氏は食べ物関係のプロでミーツ・リージョナルなどでも文章を書いておられる方なんで、大阪や兵庫についての食べ物文化やお店にも詳しいわけですが、、、彼のいうところの大阪独特の食べ物、他の地方のお客さんがきて「これが名物だから食べてね」的なものがないことについてのくだりは痛く関心して同意するのですが、彼が同じ視点で北摂のニュータウンやら芦屋やらのことをバッサリと切り捨てていくくだりにはちょっと反発を覚えたりもするのです。彼によれば、それらは、どこをとっても金太郎飴的な生活空間だけがあって街としての生の生活がない、であったり、芦屋や夙川方向はちょっとハイソでなんか違うという感覚があるようだけれど、どちらにも住んでいた身としては、あんな山奥なのにちょっとしたこじゃれたレストランやカフェが乱立する箕面は侮りがたいなと思うし、神戸方面のどこの下町にいっても美味しいパン屋さんがあって、ちょっとした洋食屋がちょこちょこある暮らしもなかなか美味しいものだと思うのですよね。特に神戸方面はちょっとしたことに気がきいていて、生まれた街であるということを差し引いても高い評価を上げたいわけです。
 特に、ご本人さんが関西人、わけても大阪人に対するイメージの「こてこて」について、あんなものは吉本が作った幻想であり、作られたイメージを拡大再生産してわかりやすくしているだけのものであって、決して大阪の本質ではないというような正しいことをしっかりと言う人だけにこのあたりはなんか僕の中で評価が定まらないとこになります。
 
 まぁ、たぶん大阪人や関西人以外にとってはこの本自体がピンとこない本になってしまうのかも知れませんので、このあたりの微妙なニュアンスやジレンマがどこまで伝わるか微妙ではありますけれどね。関西人って、自分の出自やら文化に対してまったくもってマイナス評価をしない自信過剰な集団ですから、他の地方の人からするとわけわからんところが多いと思うのですけれど、この本はそのあたりのことを比較的うまく書いてくれているんですけれど、、、やっぱり微妙。

街場の大阪論 (新潮文庫)

街場の大阪論 (新潮文庫)