小説・漫画好きの感想ブログ

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「もやしもん」9巻 石川雅之著  

 もやしもんの9巻です。
 少し前のアニメ化に続き、明日くらいから実写版のドラマもスタートと絶好調の「もやしもん」です。
 今回は前作のオクトーバーフェスというビール祭りのあとの話ということで、農学部の本道に立ち戻って農学談義が繰り広げられていまして、漫画といいつつもかなりアカデミックでたくさんの雑学・豆知識を得られるとともに、食糧自給率の問題やら酵素の話を考えるいいきっかけになる話がつめこまれています。非情にできがいい巻です。
 例えば、僕もかねがねうさんくさい問題だと思っていた食糧自給率の問題。
 ここにもかなり鋭く突っ込みがはいってきます。皆さんも最近よく目にする「日本は食糧自給率が悪い。40%も切っている」だから農業にもっと力をいれていかないといけないという論調。確かに食糧自給率は高いにこしたことはないんだろうし、中国がどんどんと食料を買いあさり始めれば飢餓のときに日本をはじめ周辺国はひどい有様になるだろうから、額面だけでいえばその通りではあるのだろうけれど、これってなんだかうさんくさい話だと思っていたのです。
 で、読んでいけば、その食糧自給率40%というものの嘘くさいカラクリがよく見えてきます。実は、この40%というのはかなり眉唾。食糧自給率の中でも低い低いといわれる、穀物自給率なんかも主食の米というのでいえば本当はほぼ100%、それがどうして穀物自給率があんなに低くなるのかといえば、畜産家畜用の飼料に小麦やトウモロコシを輸入すると、それも含めてという計算になるのでいきなり10パーセント台になってしまう。じゃあ、日本の畜産飼料はすべて国産の米でまかなおうとするとコスト高はもちろんのこと、鶏なんかを米で育てると卵が白っぽい、黄身が黄色くない卵になってしまうので売れなくて、結局黄色い色がよくでるアメリカ産のトウモロコシなんかを餌にする、、、そうすると穀物自給率だけでなく、飼料を海外からとってきているのなら、その鶏から生まれる卵は国産自給といえなくなって、本当は日本国内の卵は100%自給率なのに、統計上では卵の自給率は10%になってしまうという、、、なんだかわけのわからない話ですよね。
 そして、そういう議論の果てにでてくる、その自給率の話が誰が誰に対して呼びかけているものかわからない、それよりそんなに自給率が気になるならコンビニやら外食で廃棄される食料以上に家庭内からの廃棄食料が遙かに多い現状をどう考えるかという話に激しく同意すわけです。
 このあたりは本当に考えていかないといけない話だし、環境問題とリンクして考えるならば、先日に出したフードマイレージという考え方とあわせてきっちりと国民全体に認識を高めていかないといけない問題だとも思うわけです。
 漫画の解説にしては堅くなっちゃってしまいましたが、そんなような巻でなかなか面白くてためになる「もやしもん」最新刊でした。
 (世間的ニュースでみる限りでは、もやしもん実写版の紹介や記事の半分近くに、実写版もやしもんAKB48板野友美という人がでるということばかりが強調されていましたが、、、この漫画、そういうとこだけに注目はしてほしくないものです。オリぜー達菌類と菌類の発酵について笑いながら深く感じ入る漫画なのです^^)

もやしもん(9) (イブニングKC)

もやしもん(9) (イブニングKC)