小説・漫画好きの感想ブログ

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「となり町戦争」 三崎亜紀著 

 そういえば、これ読んだのずいぶんと前なのに紹介が遅れていました。
 この「となり町戦争」って本、自分的にはかなり評価高いです。
 タイトルだけ聞いたときは、ほのぼのとした話なのかとおもいきや、本当の本当に日本国内の自治体同士が粛々と戦争を行っていくという不条理かつ気持ち悪い話なんですが、あまりに物語と登場人物たちが話を淡々と進めていくアンバランスさにひかれて、いつの間にか一気に読みふけってしまいました。
 感じとしては、村上春樹が一番近いのかな。主人公がどことなく受け身のままだったり、感受性にとぼしかったり、非現実的な出来事をそのまま受け入れてみたり、女性に関して今風にいえば草食動物的なところがあって、初期の村上春樹っぽいです。でも、そこで展開していく話はやはりとてもオリジナリティーがあって、不可思議で、透明さと凡庸さが同居するという不可思議な世界観といい、才能を感じさせます。この人の本は他に読んでないので他の作品はわかりませんが、これは結構おもしろかったです。
 戦争ものなんだけれど、それはあくまでメタファーとしてその奥にある、日常のへんてこさ、日本人ならではのありえるかもしれない不思議な世界といい、悪くないです。
 
 一応のあらすじは、本の紹介文をそのまんま引用しますと、こんな感じ。
 「ある日、突然にとなり町との戦争がはじまった。だが、銃声も聞こえず、目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。それでも、町の広報紙に発表される戦死者数は静かに増え続ける。そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた…。見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。文庫版だけの特別書き下ろしサイドストーリーを収録」

となり町戦争 (集英社文庫)

となり町戦争 (集英社文庫)