「鉄腕バーディーEVOLUTION 」5巻 ゆうきまさみ著 感想
本の紹介と漫画の紹介と感想もリハビリ的に。
鉄腕バーディーの最新刊。
廃刊になったヤングサンデーからビッグコミックスピリッツに移って、もう5巻ぶんがたまったのですね。という感慨はさておき、今回の話は切なかったなぁ。主人公の千川つとむの想い人の、中杉さやか嬢が交通事故で意識不明の状態におちいり、あろうことか、その人格だけが殺人プログラムを組み込まれたアンドロイド(通称、人形)の中に埋め込まれて、彼とバーディの前に現れる。
SF的には、オーソドックスといえばオーソドックスな展開だけれど、初恋の人がアンドロイドの中に人格として立ち現れる、しかも、自分はそれを見ているしかできない、またそのアンドロイドの中ではベースの殺人ロボットの意識もちらちら見える。。。青春ものの葛藤が入っているところもこの物語が重すぎずになる要素ではあるのだけれど、今回のこのシチュエーションは切ないです。
もしも、本体の中杉さやかが目覚めたとき、アンドロイドの中の仮想人格はどうなるのか。あっさりとフォーマットしなおすことですべては割り切れるのか。そこに生まれた意識はどうなるのか。そもそもが千川の今の状態も、ある意味でいえば本物の体をなくした仮想人格であるところが、簡単なわりきりを実は許さない。仮想人格なのだから消してもいいという話でいくのであれば、記憶さえ移せば今の千川の意識もふっつりと消されることをこれ良しとしなければならない。今のところ、そのあたりが問題にならないのは身体のほうが生存もままならない状態で意識すらないであろうという前提があるからだが、もし、千川の身体のほうの本物の意識が復活したら、そして、そちらの人格がいまの千川の人格を拒否したら、、、まぁ、そんなところで物語がややこしくなっていくことはないんだろうけれど、そういう危うさをはっと感じさせる設定と展開なのでした。
アンドロイドに、こんな身体はいやかときかれて「中杉なら、どんな姿でもいい」とこたえてしまう千川。気持ちはとてもよくわかるだけに切ないなぁ。。。
- 作者: ゆうきまさみ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/06/30
- メディア: コミック
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