小説・漫画好きの感想ブログ

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「神狩り2」 山田正紀著 

 SFの歴史上に燦然と輝く名作「神狩り」の続編。
 前作は、古代文字の論理的記号から、人間には理解できない「神」の存在が明らかになり、それに対して無謀ともいえる一部人間の戦いを描いた物語でした。
 その続編は、それから約二十年後という設定で、前作のメンバーや、そのメンバーの子供なども出てきますが、、前作と比べると派手なアクションシーンと脳生理学の話がたくさん出てきて、ちょっと別作品として読んだほうがいいような趣きでした。
 「リッパー」と呼ばれるもの、かつてアダムとイブがエデンの園を追放されることになった木の実、それはリンゴではなく赤い何かであった。そのリッパーを現代に大量生産することで「神人」を増やす計画を建てるもの、神を感知できる神人となり人間を越え、天使となるもの。またその天使を知覚しつつ、軍事に利用しようとする大国。それに抗おうとする主人公たち。彼らの動きが、時間や場所や視点をめまぐるしく変えながら描かれるこの作品は、非常に評価が別れると思います。
 神を冒涜しているとかしていないとか、そういうレベルの話ではなくて、神とは何なのか、この作品世界の神は何故イエス・キリストを殺し、パウロにうつろで壮大なキリスト教というまったくイエスと関係ないものを作らねばならなかったのかから始まり、人間の脳の海馬に隠された謎とは何かという話から展開していく物語は、瀬名秀明さんや茂木健一郎さんとの対話や勉強から生まれた新しい解釈で「脳内世界」が描かれておりなかなかに興味深いです。この脳の話やクオリアは、SFの一つの味付けとしてスルーしてもいいんですが、作中で「神」を感じられる「神クオリア」という概念はなかなか興味深いです。
 このだまされやすい、というか、自らをだまし、記憶をも改ざん、編集することが日常の脳というものについて、宗教のなりたちや一つの解釈としての知的な面白さを良しとするか、それにひきくらべると小説としてのまとまりや決着のつけかた、矛盾のほうに注目点を置いていまひとつと捉えるかで本作品の評価はかなり異なってくるでしょう。
 

神狩り〈2〉リッパー (徳間文庫)

神狩り〈2〉リッパー (徳間文庫)