「赤い夢の迷宮」 勇嶺 薫著
はやみねかおる。
児童文学というか、青い鳥文庫的なものというか、とにかくそっちの世界の方でのビッグネームのはやみね先生が書かれたミステリーがこちら「赤い夢の迷宮」です。児童文学の方のミステリーというと「くまのプーさん」のA・A・ミルンの「赤い館の謎」(「赤い館の秘密」だったかも)が有名なので、ああいう感じのわりあいとほのぼのと正統オーソドックスのミステリものかとおもいきや、ベクトルとしてはスリラー、サイコホラー、サイコパス、猟奇の方向にかなりシフトをきった作品で、読む前の印象を大きく裏切る結果となりますのでご注意。
お子様ランチを頼んだつもりが、激辛料理、もしくはエスニック料理がきたくらいの違和感があります。最初からそういうものだと思っていれば心構えもあるのですが、名前と内容がかなり違いますので、児童文学の担い手としてのはやみね先生が好きな人は避けたほうがいいかもと思います。
さて、あらすじ。
小学生のときの仲良し7人組のぼく、ゴッチ、ユーレイ、ウガッコ、魔女、ココア、Cちゃんは、当時つきあっていたOGという老人から同窓会の招待を受ける。「世の中には、やっていいことと、やっておもしろいことがある」などと語る不思議な男OGは、大金持ちでありつつも奇癖があるとして大人たちからは敬遠される存在であった。実際、彼は子供心にも異常な人物ではあったのだが、当時の七人組は皆OGの不思議な魅力にひかれ、大人たちには内緒で彼のもとへとよく集っていたのだ。
子供時代には屈託なく集まっていたメンバーだが、大人になればそれぞれ色々な成長やら挫折やらしがらみやらが生まれて、七人は集まったが当然のことながら当時の純真な存在ではない。それぞれがそれぞれに色々な思いを胸にOGのもとに集まった。そして、OGも当然のことながら色々な思いを秘めての招待を彼らにかけたのだった。
小さな町をしきるOGが密かに考え、計画し、実行した舞台に集められた七人は、予想だにしない惨劇に巻き込まれていく。。。。
感想としては、かなり後味が悪い作品です。
語り口は甘いというか優しいんですが、中で行われていることは狂気、グロ、歪んだ神経の行為が盛りだくさんで、連続殺人鬼が登場するかと思えば、だましあい、殺し合い、憎しみあいまでさまざまさまざまで、後味は悪いですね。平山夢明の作品を優しいタッチに変えたといおうか。トリックとしては、非常に軽いし薄いのであまり謎解き要素は期待せずに、ただただ流れに身を任せて非現実的な世界に漂うというのがこの本の正しい読み方なのでしょう。
ただ、惜しむらくをいえばキャラクター造詣やトリックはもう少し練りこむというか深い方がいいかな、と個人的には思いました。
- 作者: 勇嶺薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/05/14
- メディア: 文庫
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追記、はやみねかおる先生、そういえば、ちょっと前には仲間由紀恵と阿部寛の映画版トリックとコラボだったのか、「帰天城の謎 ~TRICK 青春版~」というのを出しておられましたね(どうでもいい余談ですが、阿部寛主演の「新参者」の刑事が、まともな上田教授に見えてしかたなかったです)。