小説・漫画好きの感想ブログ

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「友達100人できるかな」3巻 とよ田みのる著 

 最近、気分によって読む漫画を変えてみるのもいいかな、なんてことをふと思った。
 疲れているときにはこの漫画。
 テンションをあげたいときにはこの漫画。
 メロウな気持ちのときにはこの漫画。
 まぁ、気分にあわせて音楽を聴いたり、逆に気分を変えるために音楽を聴いたりする、あれの漫画版な発想です。考えてみれば、気分によって飲むコーヒーのブランドやブレンドを変えて注文することはよくあるし、実際に自分がよくする事ですから、その伝でいえば漫画もそういう選択はありかなと思ったわけです。
 そういう感覚でいくと、この「友達100人できるかな」は童心に帰りたい時に、ちょっとピュアな気持ちになりたい時に読みたい一冊です。 
 
 ギャグ漫画なんですが、この漫画、設定がなかなか秀逸なSF設定でして面白いのです。
 とある日、地球の大都市の上空に宇宙船が大挙してあらわれ、人々はパニックに陥ります。主人公の直之も、そんな人々の一人です。35歳の小学校教諭である彼は、出産間近の妻の入院する病院にいたときに宇宙人の襲来を受けます。彼は、いきなりその宇宙人たちによって訳が分からないままに、過去の世界へと飛ばされてしまいます。目覚めた彼は、自分自身が小学三年生の頃の姿になっており、そこがまさに過去の自分が過ごした過去そのものであることを知ります。タイムスリップ? いぶかる彼の前に現れた宇宙人は、直之に彼らの目的と過去へととばした理由を説明します。
 彼ら宇宙人は、地球人類に対するテストの為に彼を過去へと送ったというのです。
 彼らは、地球人類に「愛」が存在するかどうかを確認したいのだ、と。というのも、彼らのルールでは、愛が存在する惑星は侵略したり滅亡させることができず、この地球を滅ぼすべきかどうかをこのテストで確認したいというのです。テストにパスすれば地球は祝福され、失敗すれば人類は全員滅亡してしまうというのです。そして、その愛の確認のため、純粋な愛が存在するかどうかの確認手段として、彼らは一人の人類代表を過去へと送り、期間内に百人の友達を作れるかどうかでテストするというのでした。
 かくして、選ばれた主人公は、過去に飛ばされ小学三年生の姿になりながらも、その世界で友達を作ろうとがんばるというのがこの漫画の基本設定です。
 この設定だけみるとずいぶんと重い設定に見えますが、基本はギャグ漫画ですし、この設定のおかげで読み手である我々は、主人公同様に子供視点と大人視点の両方を楽しめるわけですが、そのあんばいが実に素晴らしく、強いカタルシスを得ることができるのです。
 子供になる、友達を作る、というところで、自分自身が本当は大人であることを忘れて子供の世界にひたりきる主人公の姿に
読み手も自然と童心に帰り、その主人公たちといっしょに生き生きと(当たり前ですが)小学生ライフを満喫している友達たちを見ていて素直な心持ちになり、その友達づくりの悪戦苦闘とふと我に返ったときのほろ苦さに大人として共感して大人として子供を優しい視線で見ることで深い満足感を得ることができます。本当に、基本設計が実に利にかなっていて素晴らしく楽しめる漫画です。
 勿論、この漫画はそんな小難しいことを考えなくても、というより考えずに楽しめる漫画なのですが、そういう分析をあれこれ考えてしまうくらい素晴らしい漫画です。「ドラえもん」レベルで国民愛読漫画にしたいくらいの漫画です。まぁ、子供が読んで楽しめるかというとクエスチョンがつきますが、でも、本当に面白い漫画です。

友達100人できるかな(3) (アフタヌーンKC)

友達100人できるかな(3) (アフタヌーンKC)