小説・漫画好きの感想ブログ

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 「天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線」 野瀬泰申著

 ずいぶんと昔に途中まで読んでそのままにしていたのをゴールデンウィークの頃に読みました。
 タイトル通り、日本の地方地方の食文化の違いについての本なんですが、肩肘はらずに楽しめる本でした。 
 雑誌とかケンミンショーみたいに部分部分のネタを切り取るのではなく、一つの食べ物についての国内分布やそういうことにいたった背景にまで思いを馳せたり歴史を調べたりという姿勢がとても好ましく読んで楽しいだけでなく勉強になりました。ひとえにこれは著者の野瀬さんという方の真摯な姿勢によるモノでしょう。著者は、色々な食べ物について、ネットを駆使してアンケート方式で情報を集めるだけでなく、実際に各地を食べ歩き、民俗学のフィールドワークのような実地調査もした上で本を書かれる方です。ですので一つ一つのネタがしっかりとした裏付けの上に楽しめるのがよかったです。
 この本を読んでいると、自分の食べ物についてのイメージが本当に土地や周囲によってイメージづけられているだけのものであるというのがよくわかります。
 例えば、、、
 「天ぷらにソースをかけますか?」かけることなど考えた事もありませんでした。
 「ナメコのみそ汁はどうですか?」あまり食べませんが、言われてみればあまりお店で見た事ないです。
 「カレーに卵を入れるとしたら?」疑問なく、もちろん生卵です。ゆで卵はあり得ません。
 「中華まんは肉まんと呼びますか? 豚まんと呼びますか?」豚まんです。
 「何をつけますか? 」辛子です。
 「あなたの町にサンライズはありますか?」サンライズ、当然です。
 「みそ汁にニラをいれますか?」想像したことも食べた事もないです。
 問いに対する自分の答えは、関西人としては典型的なものらしいノですが、他の地方によっては全然違うみたいですね。このあたりがとても面白いです。よく言うように、関西と関東というか、岐阜あたりで南北にきった線に沿って食文化は全然また別になるようですが、それ以外にも伝播や歴史的背景によって食べ物の食べ方や味が全然違うというのは本当に面白いものです。食文化は、食べ物の方言であるというのはけだし名言だなぁと思います。
 ちなみに、言われてみればそうだなと思ったのを一つだけ挙げると、関西人の自分からすると「肉」といえば普通はやはり牛肉なんですね。肉じゃがはもちろん、カレーであれなんであれ、何の注釈もなく肉というと自然とイコール牛肉というイメージがあります。だから、肉まんという単語にはものすごく違和感ありますね。あれには肉は入っていない、豚ではないかと。それぞれの読み手が、自分の食べ物の概念というかイメージや習慣が、狭いこの日本の中でもいかに地域限定での共通言語だったかをわかるというのはなかなか興味深いと思います。
 上の「天ぷらに・・・」以降のいくつかの質問、あなたの地方はどうですか?

天ぷらにソースをかけますか?―ニッポン食文化の境界線 (新潮文庫)

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