小説・漫画好きの感想ブログ

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「皇国の守護者」1巻 佐藤大輔原作、伊藤悠著 

 今年、117冊目の紹介本です。
 わりと硬派な戦争ものです。タイトルに皇国とついているところから、勝手に第二次世界大戦や日清日露戦争当たりの頃の右翼的な世界観の物語かと思っていたのですが、そうではなくて、架空の世界の戦記物語です。
 日本によく似た国があり、ロシアによく似た国がありその両軍が戦争をしますが、基本全く別の世界です。
 例えば、直接物語には絡んでこないのですが、この作品世界では何故か龍が普通に存在していますし、人間と龍はお互いに意思疎通ができるという設定になっています。そういう世界だけに、ちょっとずつ基本の生態系も違い、代表的なところでは龍以外にもサーベルタイガーなども各地にいるらしく、主人公は軍人なのですが彼の率いる部隊はその虎たちと一緒に戦ったりもします。
 さて、そういう主人公が行なうのは、突如、北の帝国から領土を攻められた北方の島での皇国皇民が脱出するまでの撤退戦。早い話が殿軍での時間稼ぎの戦闘です。敵は自分たちより数倍も多い帝国の精鋭部隊。頼りない上官たちが真っ先に逃げ、上官たちがどんどん死亡する中で、主人公の新城直衛中尉は孤軍奮闘にも等しい無茶な撤退戦をしなくてはならなくなります。
 無能な上官。
 皇室所縁のお飾りのような将軍。
 圧倒的に強い敵軍。まるでどこかで見た戦争のような状況ですが、その中で新城はいかに戦況を打開し、成長していくのか。そういうところが読みどころのようで、1巻を読んだ限りではなかなか面白かったです。チビで、無愛想で、下士官としては有能だけれど、どこかちょっとおかしい(精神的に何かおかしい雰囲気を漂わせています)主人公も味がありますし、なにより、戦記物としての戦闘の描写がなかなか素晴らしいです。
 戦争もの、戦記ものは画力がない人が漫画にすると途端に読めたものではなくなるのですが、これはなかなか上手いです。リアル一辺倒ではなくて、デフォルメしたり適度に漫画レベルに設定した姿形もちょうどいい絵柄です。
  

皇国の守護者 1 (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)

皇国の守護者 1 (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)