「孤愁ノ春ー居眠り磐音江戸双紙(33) 佐伯泰英著
居眠り磐音シリーズの最新刊感想です。
前作で、次期将軍候補として育てられて来た徳川家基が田沼意次によって毒殺され、その結果として佐々木玲圓夫妻が殉死するという衝撃の展開を迎えた本シリーズ。
この作品は、物語途中から、英邁な次期将軍候補を護る主人公サイドと、その敵として幕府の中で専横を繰り返す田沼意次一派という対立構図ができていたのですが、それが前巻で完全に崩れてしまいました。はなから勝負にならない相手ではあるし、徳川家基が死ぬことは仕方ない歴史的事実として、、残された磐音がどうするのか、田沼意次との戦いがどうなるのか、そもそもどうにかなるものかお話としてどうなるのかも全く先が読めなくなりました。
なので、今回の新刊はかなり興味津々で手にとりました。
ひょっとしたらすごくつまらなくなるか、或いは荒唐無稽な方向に(座光寺シリーズのような例もあるので)いってしまうのかとも心配しながらの読書でした。で、まぁ、そんな展開についてですが、結論からいえば、ちょっと微妙に曖昧なまま話は展開していました。
物語の大筋としては、主人公側の状況は更に悪化。予想されていた通りだからネタバレにはあたらないかと思いますが、尚武館佐々木道場は閉鎖、将軍御側衆の速水氏は捕まって押し込めにあい、佐々木磐音に関わった人たちへは監視の目がつき、数々の嫌がらせが行なわれるようになっていきます。ある意味、当時の最高権力者によるあからさまな圧力がかかっていきます。
ことここにいたって、主人公の磐音は妻のおこんを連れて、旅に出ます。
もちろんのこと、捕縛を逃れるためにも偽名を使いの逃避行じみた旅です。今津屋の寮から一計を案じて落ち延びた二人は、義父母への最後の孝行を果たすべく出発します。当然のこと、田沼意次の配下の者たちの追跡はそこにも伸びるのですが、、、、。
まぁ、展開が展開ですから、作者も悩んでおられるのでしょうねぇ。
田沼意次を倒すためのアイテムというか、仕込みは各所に出てくるものの、普通に考えたらまったく相手にならない状況が日々強化されていくわけですから、物語としても難しいですからね。
いささか主人公の磐音が強くなりすぎてしまった本シリーズですが、大好きなシリーズだけにうまい着陸点を見つけてくれたらなぁと切に願います。
- 作者: 佐伯泰英
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/05/13
- メディア: 文庫
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