小説・漫画好きの感想ブログ

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「謁見 交代寄合集伊奈異聞」 佐伯英泰著 

 幕末の動乱期の、とある快男児の活躍を描いたシリーズ作品の文庫最新刊です。
 今回も、主人公の座光寺藤乃助は江戸と長崎の間をあちらこちらと移動しながら活躍します。メインの任務は、アメリカからの使節であるハリスがいよいよ江戸城にむけて出発するその警護となりますが、案の定、攘夷派からの奇襲攻撃があり座光寺はそれを迎え撃ちます。まぁ、ガトリングガンで武装し、剣術の達人でもある主人公だけに、ハラハラとする間もなく勝ってしまうのですが、、。
 さて、その一方で、長い長い鎖国期間、清国以外では唯一日本と交易をしていたオランダがアメリカに出し抜かれることが確定してしまうこの巻では、それに対してしたたかに対処する長崎商人や中国人たちの様子も描かれています。
 龍馬伝などのような、国と国、尊王攘夷や佐幕の戦い、政治的駆け引きではなく、外交の裏側の生の当時の人のいきる世界にスポットをあてていた冒険活劇のこのシリーズ、だんだんとそういうテーマと歴史的事実に主人公としてかかわらざるを得ない大きな動きとの間に乖離が出て来てしまっているように感じます。
 勝海舟先生くらいしかまだ出て来ていませんが、これが龍馬だとか新撰組の面々などが出てくる頃にはどうなるのだろうかと不安が一杯です。

謁見 交代寄合伊那衆異聞 (講談社文庫)

謁見 交代寄合伊那衆異聞 (講談社文庫)