小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「ミサイルマン」 平山夢明著 

 かなり前に読んだまま、紹介を忘れていた一冊。
 「ユニバーサルメルカトル」に続く平山夢明の短編集です。
 巻末で鬼畜系と揶揄される平山明夢らしく、今作でもかなりグロテスクで鬼畜な話が展開されます。が、それと同時に、そのグロテスクだったり猟奇な中にたとえようもなく純粋だったりロマンティックな話や美しさがあります。このバランス感覚の良さというのは他になかなかないもので、ここまで残酷で気持ち悪くて痛々しい話の数々にどうしてこうも甘いロマンティックな要素が混在できるのかと実に不思議です。
 もちろん、表題作の「ミサイルマン」のように、思い出すだけでもおぞましくグロテスクでえげつない話も入っています。本当にひどい、救いようがなくて、どういう精神構造をしていたらこんなタッチでこんな風にひどい話を描けるんだろうという話もあるにはあります。 
 でも、全体を通していえば、普通ではないし、歪んでいるし、曲がっているし、自己的なものではあるのだけれど、屈折した歪んだ愛情が、確かに話のスパイスとしてふりかけられています。 
 この妙味こそが平山夢明という作家の本質なのでしょう。
 そういう意味ではとても彼らしい短編集です。しかし、個人的な要望でいえば、そろそろもっとどっしりとした昏くて魂がひりひりするような話を読んでみたいです。