小説・漫画好きの感想ブログ

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「卒業」 東野圭吾著 

 「秘密」や「探偵ガリレオ」で一般にも一躍有名となった東野圭吾さんの、メイン連載シリーズの1つ「加賀恭介」シリーズの、時系列的には一番古い作品となります。なんせ加賀恭介氏本人が未だ大学に在校中で、刑事にもなっていない時のお話ですから。
 この加賀さんのシリーズ、このたび、「新参者」というタイトルで阿部寛主演でテレビドラマ化するそうですが、、、僕にとってはこれまたお噂はかねがねなられど初読みのシリーズでしたので、順序よく一番古い作品から読み始めてみました。
 で、感想ですが、一言でいえばかなり気負いの感じられる作品でした。
 大学在学中の事件、いうなれば素人探偵としての話とはいいながら、男女七人の友達のうちの三人までもが死んでしまうという(ネタバレごめんなさい)かなりハードな展開の、いわば連続殺人事件を扱ったもので、素人探偵として彼が動いて行くシリーズ最初の作品にしてはかなり力が入っていますし、トリックに関してもかなり色々とアイデアが詰め込まれていて、著者のなみなみならぬ気負いが感じられました。
 これはミステリとしてもそうですが、青春群像としてのところにも力を入れているのがわかるので余計にそういう感触を持ちました。それぞれの悩み、苦悩、大人になる前の葛藤みたいなものを全て詰め込んでいるのでかなり内容的には本来重いです。ただ、そのわりには読後感がまだ軽いのは、本当の意味での徹底した悪人が登場しないのと、彼ら学生がなんだかんだいいつつもどこか観念的で、浮世離れしているというか、悩むには悩むけれどどこか高等遊民的な切迫感のあまりない感じがするからでしょうか。
 物語の内容や、状況からすると、もっともっとドロドロでどうしようもないくらいの状況があってしかるべきだとは思いますが、連続事件という重さにも関わらず、それがあまり感じられなくむしろて甘酸っぱい青春ものの雰囲気のほうが読後に残るくらいです。
 

卒業 (講談社文庫)

卒業 (講談社文庫)