「コンラッド・ハーストの正体」ケヴィン・ウィグノール著
海外ミステリ、というよりはハードボイルドもの、かな。
主人公はユーゴスラヴィアでの戦争に巻き込まれ、恋人を爆撃で失ったと知ったときから精神の箍がはがれプロの殺し屋となった青年、コンラッド・ハースト。彼は、麻薬組織のボスの命令を受けて、次から次へと何も感じずに人を殺し続けていたが、元ナチス関係者らしき老人を殺したときにふと自分の現在を冷静に見つめ直し、足抜けを決意する。プロの殺し屋だったこともあり、彼の正体を知るのは連絡役やボスも含めてわずかに4人だけ。ならば、その4人を殺して組織から完全に消えてしまおう。
そう思った彼は、連絡係の男のもとへと行き、その男をあっさりと殺します。しかし、死の直前にその男が「全部、嘘だった」と言い残します。何がいったい嘘だったのか、単なるハッタリだったのか? 結論が出ないままに、組織を抜けることだけを考える彼はボスのもとへと赴くのですが、そこで彼が見たものは彼が知っていたボスがまったくの別人であったという事実。そして、彼のもとにはCIAのエージェントや、ICPOの捜査員までもが現れます。彼は一体この十数年何をしていたのか? 本当の真実とは・・・?
こんな感じで、あらすじ的には、殺し屋の更生の物語かと思いきや、物語は一転国際謀略小説となっていきます。果たして、彼は失った恋人への思いを胸に、きちんと組織を抜けられるのか、真実に辿り着けるのか。。。
というお話なんですが、感想から言うと、読ませるのは上手いです。サクサクとお話は進んでいきますし、筆致が軽いので読みやすいです。ただ、、、更生すべき主人公はあまりに頭が悪いし、人を殺しすぎます。殺しがいけないと思って組織を抜けようとしている筈なのに、バンバンと人を殺します。しかも大半は殺さなくていい人たちを。このあたり、こういう壊れた性格だから、殺し屋としてスカウトされたのかも知れませんし、人を殺し続ける中で感受性が摩耗したのかも知れませんが、、違和感もありますし、それが故にシリアスな話がシリアスになりきれず、どこかシチュエーションメディにすら感じられたりもします。次々にでてくる女性との間の抜けたやりとりや対応などもそうなので、それが味といえば本作品の味でしょうけれど、ちょっとギャップは残りますね。
でも、そのぶん、映画にしたりコミックにするといい塩梅なのかもしれません。
- 作者: ケヴィンウィグノール,Kevin Wignall,松本剛史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: 文庫
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