小説・漫画好きの感想ブログ

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「妖魔戦記」 菊地秀行著 

 何を勘違いしたのか、菊地さんの新刊だと思って文庫購入。
 結果的には未読なので問題なしでした。お話は、念法の達人の工藤秋彦と妖魔の呪いに犯されている南風ひとみが、妖魔相手の戦いを繰り広げるシリーズ作品の文庫では最新刊となりまして、今回は東北地方の温泉宿を舞台に戦いが繰り広げられます。闘う相手は、その地方に戦国時代にわたってきた宣教師とその弟子たちの怨霊。日本にきて、神の救いがもたらされなかったことに絶望と怒りを覚え、神から魔王へとその仕える相手を変えた魔人が現代に甦ります。
 ということで、お話的にはいつも通りの、妖魔シリーズ。
 やや違うのは、今回の敵は元宣教師ということで、生粋の悪魔や妖物、あちら側の魔物はほとんど出て来ません。どちらかというと、神の不在に絶望した魔術師の彷徨といった感じで恐ろしさ怖さはあまり感じられずでしたので、そのあたりで戦闘のスケールがかなりダウンしてしまっているのはマイナスでしょうか。この妖魔シリーズの魅力の一つはなんだかんだいってチャンバラや化けものとの戦いなので、そのあたりが薄いといまいち物語の盛り上がりが少ない感じがします。
 シリーズ解消当初のもう一つの売りであった「いやらしさ」はせんからパワーダウンしているのでそこはもう織り込み済みですが、魔物との戦いや戦闘シーンはもっと元気よく弾けて欲しいもので、このレベルだとあまりお勧めとまではいかないです。
 菊地センセイには、そろそろ、どのシリーズでもいいので「これは!」という作品を一発書いて欲しいです。秋せつらのシリーズでもいいですし、この妖魔シリーズでもいいですし、闇ガードでもいいです。意表をついて、リリスのシリーズでも結構ですので、何卒よろしくお願い致します。

妖魔戦記 (光文社文庫)

妖魔戦記 (光文社文庫)