小説・漫画好きの感想ブログ

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「フィッシュストーリー」 伊坂幸太郎著 

 もし自分の○○が魚だったら、きっとあまりの○○に・・
 というキーワードに展開する短編集。連作短編集というわけではないものの、各作品が黒澤という泥棒を軸につながっていたり、「オーデュボンの祈り」の伊藤が話題に出てきたりと伊坂ワールドが全開の短編集。
 あくまで軽快に。
 あくまで少しシニカルに。
 でも、あるがままに人生を楽しんで。
 伊坂幸太郎作品に出てくる主人公達はちょっとずれてて、ちょっと感覚やら価値観が普通の人と違っているんだけれど、それでも共通しているのは人生を楽しんでいるところ。捨て鉢になっているようでも、ふてくされているようでも、世捨て人のようでいても、或いは犯罪者であってさえも、自分のやりたいこと、楽しみたいことがはっきりあって動いている。そして、それをあくまで客観的にちょっとクールに眺めている。
 そのあたりの感覚が他の作家さんの作品とは決定的に違っていて、伊坂作品を読んでいるとグライダーに乗って空を滑空しているような不思議なスイスイした感覚を味わえる。自分が何かを運転しているわけでも、エンジンをつけて動いてるような疾走感とも違って、すっと何かに乗せられてどこかへ運ばれていくような感じ。主体的であっても、どこか足に地がついていなくて浮遊感に溢れている。
 この短編集もそんな感じで楽しめました。
 お勧め。

フィッシュストーリー (新潮文庫)

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