「泣き虫弱虫 諸葛孔明 壱」 酒見賢一著 感想
三国志といえば、その多彩な登場人物が魅力なわけで、何故だか本家中国よりも日本でのほうが有名になってしまった人物も多々おられますし、物語自体の浸透度はなまじの国産物語より高い不思議な物語です。そのキャラクターというか歴史的人物の中には、関羽など本国中国では神様になってしまわれた方もいて、曹操やら劉備などはもちろん、諸葛亮孔明の名もそれと同じレベルの知名度を誇ります。
諸葛亮孔明といえば、弱かった劉備軍を一躍天下人にした天才軍師ということで知らない人はまぁいません。今までのいろいろな小説・映画の中でも、勤勉にして、忠誠心の厚い、これ以上ないくらいの人物であり、かつまた天才的な万能人として描かれてきました。
その孔明が、、、ひょっとして変人だったら、それも超がつくほどの変わり者で、おかしな人物であったとしたら、そうしたら歴史上に見えるあれこれはこんな解釈も可能なのではないかと極限ギリギリまで頑張ったのが酒見賢一の「泣き虫弱虫 諸葛孔明」です。
この作品に出てくる孔明は、まぁイロモノです。
壊れています。人格は破綻しているし、人を人とも思わないし、自分の世界に耽溺、口先三寸だけで周囲をふりまわす人物です。しかも、ずれています。でも、最高にこれが面白いのです。なまじなギャグ漫画より遥かに面白いのです。酒見さんは、まじめで深い中国ものも書ける方なんですが、それだけに崩して楽しんで書くことに徹するとここまでいけるのかと開いた口が塞がらない出来です。三国志好きであれば、一度は読んでみても損はないでしょうし、ギャグとして三国志を受け止められるようであれば(ときに三国志ファンは自分の好みと違う三国志はまったく受け付けない方がいるので、、)、是非読んでみて下さい。
劉備と出会って、三顧の礼で軍師として出馬するまでがこの巻には描かれています。もちろん、劉備軍に近い彼の話ですから徐庶なんかも出て来ますよ〜。
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/10/09
- メディア: 文庫
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