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「密偵ファルコ 最後の神託」リンゼイ・ディヴィス著 感想

 ローマ帝国時代を舞台にした密偵ファルコシリーズの最新作です。シリーズ第17作ということでこの小説もいつの間にか超長期作品となっております。
 さて、本作では、ファルコは属州のギリシャ地方まで出張し、一件の行方不明事件と殺人事件を解決しにいきます。ファルコの義理の弟にあたるアエリアヌスが送ってきた一通の手紙から探索に乗り出したファルコですが、被害者達は七名所旅行社という旅行会社が企画するギリシア団体旅行の真っ最中。彼らを見つけるのも一苦労なら、追いついた後も殺人事件が起こるし、拘束したはずの容疑者は脱走してしまうしで捜査はグタグダの大迷走。はっきりいって今回のファルコはまったくいいとこなしです。
 思うに、数作前から始まった、ファルコが家族を連れて現地へ赴き、そこで事件を解決するというスタイルにやはりちょっと無理があるのではないかなと思うのです。旅行+ミステリの傑作といえば、A・エルキンズのスケルトン探偵が真っ先に浮かびますが、あちらは連れて行くといっても妻だけだし、滞在期間も短いので、一応話はコンパクトにまとまりを見せます。しかし、こちらのシリーズでは旅が一週間二週間、下手をすると半年近くなったりするし、今回みたいに5人6人と連れ立っての旅となると、ミステリというよりは何か違うものを読んでいるような気になってきたりもします。
 初期の密偵ファルコシリーズでは、ファルコのタフネスさや推理力、決断力、男臭さなどがハードボイルドな感じでかなり魅力的だったのですが、最近ではファルコがいいパパになり過ぎだし、緊迫感がどうしても足りなくなっているような気がするのです。そのあたりがちょっと残念な感じです。
 
 あと今回はギリシアが舞台ということでギリシア神話のエピソードやギリシアの神々の神殿などが舞台になっているので、ギリシア神話の事に詳しければより楽しめます。

密偵ファルコ 最後の神託 (光文社文庫)

密偵ファルコ 最後の神託 (光文社文庫)