小説・漫画好きの感想ブログ

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「ボトルネック」 米澤穂信著 感想

 悩みます。
 というのも、この本、紹介がとても難しいのです。
 普通の意味で「面白い」という本でもないし、「感動的」でも「エキサイティング」でもないし、「胸が暖かくなる」というのとも違うからです。
 どちらかといえば、「衝撃的」で、「印象深く」て、「考えさせられるところが多々ある」作品ですが、なにより印象に強く残るのは「異常なまでの後味の悪さ」だという作品です。負のオーラがばりばりに出ている作品です。青春小説のていは取っていますが、中身はなまじの厭世小説よりも心に苦みを植え付けます。
 けれど、ある意味傑作なのは間違いがないのです。心に残るのです。
 どのようにしてそのあたりのことを伝えたらいいかわからず、実に紹介を書くまでに悶々とした作品です。
 彼の他の作品、たとえば「春期限定いちごタルト事件」のような甘酸っぱさはなく、結果的に衝撃が待ち受ける「さよなら妖精」とも違い、後味の悪さや悪意の度合いは、ユーモラスな中にも毒が強かった「犬はどこだ」を遥かに上回るというこの作品。米澤さんの才能を強く感じさせるとともに、読んでてしんどくなる一冊でもありました。
 しんどいのに辞められない、どこか惹かれてしまうところがこの作品にはあります。主人公の弱さ、至らなさ、運命の理不尽さに翻弄されざるを得ない状況、悪意の強さ。どれもが味わい深いんです。例えていえば、ちょっとニュアンスは違うんですが太宰治の「人減失格」のような感じでしょうか。
 主人公はまだ高校生ですし、パラレルワールドにも行くし、小さなネタをしっかりと回収していく日常の謎系の要素もふんだんにあって、全体の構成物はポップなんですが、できあがった作品はひ軽みの中に苦さが強くがつんと効いています。
 なんだかわかったようなわからないようなレビューですが、是非読んでみて欲しい一冊です。
 

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)