小説・漫画好きの感想ブログ

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「海戦―交代寄合伊那衆異聞」 佐伯泰英著 感想

 幕末を舞台に、得意の剣とリヴォルバーを片手に大活躍の座光寺藤之助のシリーズ最新作、11巻です。
 今回、彼はいよいよ洋式船の海洋演習に旅立ち、将来の提督としての第一歩を踏み出すわけですが、、、この物語にしてはちょっと停滞気味と一休みの巻となりました。この主人公の座光寺藤之助は、ひとつところに留まるところを知らず、あちらこちらに動き回り、その行動がまた大きな事件を呼び込んでしまう体質なだけに、この数巻で話のスケールはどんどんと大きくなっていましたが、今回は手堅く話がまとまっており、次巻あたりからの展開への布石の巻となりました。
 いい意味でいえば、話を引き締めてリアリティのある、時代背景の空気を感じさせるような一冊となっています。今後は、本人が望むと望まざるとに関わらず、勝海舟をはじめとして幕末の志士たちと出会わずにはいられないでしょうし、そうなるとある程度がっちりとした時代性を強く打ち出す必要があったので、そういう意味ではいい感になったことと思います。
 個人的には、斬馬刀やクレイモアを振り回す彼よりは、今回のような彼のほうが好みです。
 
 追記:今回もレイナは登場、武家社会の既成概念にとらわれた人々を驚かせます。彼女、隠れキリシタンの容疑でつけ狙われている筈なんですが、まったくそんなの気にしない女傑っぷりです。ある意味、ここまで強い女性ヒロインも時代物としては珍しいです。

海戦 交代寄合伊那衆異聞 (講談社文庫)

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