小説・漫画好きの感想ブログ

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「1Q84」村上春樹の世界 洋泉社MOOK著

 今年の春に発売されて、一気に100万部、200万部と文学作品としてはとんでもない販売部数記録を塗り替え続けている村上春樹さんの「1Q84」、今でも店頭の売り上げランキングに上位にいるというから驚きです。さて、そんな村上春樹さんの「1Q84」関連のいわゆる村上バブル本の一冊を今回はちょっと取りあげてみます。大量に世の中にでまわったこの手の本の中でも、これはずいぶんと後発の本だったわけですが、後発になったぶん、他の春樹本と違って、「1Q84」のBOOK1・BOOK2のそれぞれの一章ずつからキーワードを抜き出して、それに続く形でコラムや考察、豆知識などが入っていたりして、読みやすい感じの仕上がりになっていて好感が持てるものでした。
 一般に村上春樹本といわれるものは、あまりにもくだらない名前便乗の商売本か、或いはまたマニアックすぎる学者さんの自分の解釈や深読みを押し付けるようなものが多過ぎましたが、これは適度な(やや馬鹿馬鹿しいページもあるが)バランスだと思います(思うに、ライターがたくさん参加していて、それぞれの意見が出ているから、変に固定した色もなかったのが良かったと思うんですけれど、このあたりは多少個人的な好みの問題もあるかも知れません)。
エホバの証人オウム真理教のことなどと作品の相関についても、エホバの証人にいたことがある人間・取材した人間の文章もあり、それもなかなか読ませましたし、蘊蓄や深読みもほどよい感じでした。例えば、何故他のホテルではなく「ホテル・オークラ」で教団のボスが青豆に最後のストレッチを受けたのかとか、最初の高速道路下で見つけたものがペットボトルだったのか、その意味するところは? などというのもなるほどなぁと思わせて再び「1Q84」を手に取らせるものでした。
 

「1Q84」村上春樹の世界 (洋泉社MOOK)

「1Q84」村上春樹の世界 (洋泉社MOOK)