小説・漫画好きの感想ブログ

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「神の守り人(上)」 上橋菜穂子著 感想

 「精霊の守り人」から続く、一級ファンタジーエンターティナメントの文庫最新刊です。
 このシリーズ、巻をいくら重ねてもクオリティは落ちないし、きっちり物語に入り込ませてくれるし、それぞれの登場人物がしっかりと造型されていて、非の打ち所がありません。今回の作品も自信をもってお勧めできます。
 今作、物語の幕は主人公の女用心棒のバルサが逡巡の末、人買いの手から幼い兄妹(アスラとチキサ)を助けてしまうところから幕をあけます。ロタの国民でありつつも、過去の出来事により虐げられているタルの民である彼ら二人には実は恐ろしい秘密が隠されていたのですが、バルサはそれと知らずに二人を人買いから助け出します。異界と通じてやってくる神の力を宿し、ロタ王国を根底から揺るがす力を秘めた少女アスラを巡り、ロタ王国では〈猟犬〉と呼ばれる呪術師たちも動き出します。そして、彼らはアスラを庇うタンダとバルサにもその手を伸ばします。別れ別れになるバルサとタンダ。アスラを守って逃げるバルサ。追いすがる〈猟犬〉たち。
 エンターティナメントとしても傑作ですが、このシリーズが秀逸なのは、いつものことながら一人の少年や少女の成長の物語となっているところ。夏休みの読書感想文とかに是非是非読ませてほしいくらい、大人達はもちろんのこと子供たちにも是非読んでほしい一冊です。
 

神の守り人〈上〉来訪編 (新潮文庫)

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