「陰陽師 首」夢枕獏著 感想
福田沙紀のメイド刑事を見ていたら、南野陽子がヨーヨーをもって出て来ました。やっぱりこの作品ってスケ番刑事へのオマージュになっているんですねぇ。
それはさておき。
陰陽師です。夢枕獏さんの安倍晴明と源博雅コンビの物語です。ただし、今回はひさびさに絵本仕立てになっていてたっぷりのカラー挿絵がいれられています。あらすじとしては、首塚を巡る怪異譚で、話としては小品です。首塚に対して軽い気持ちで肝試しのネタにしてしまった男を襲う恐怖に、安倍晴明たちが立ち向かうという話ですが、わりとさっぱりとしたお話です。そして、これは獏さんがあとがきでも書いておりますが、挿絵がいかにも絵本風の飄々としたどことなくユーモラスなタッチなもので、恐怖の怪談であるにもかかわらずどこか愛らしい感じさえ漂っています。
首だけとなりはてた怨霊が夜ごとに襲ってくる、となると普通はもう身の毛もよだつ怪異のはずなのに、この挿絵で語られると晴明がそもそも熱血でないキャラクターなだけに愛らしさが感じられます。でも、絵本的な短篇にこの挿絵はぴたりとマッチしていて、妖しくも美しい長篇の「陰陽師」とは違った魅力がこのシリーズにはあります。
今作ではそれ以外の趣向として、安倍晴明の兄弟子が登場したり、最後にまた例によって博雅が笛を吹くシーンがあったりもしますが、それもちょっとした彩り。今作は絵を眺めながらぼんやりと読んで、平安の頃の雰囲気を楽しむの一番いい作品です。
- 作者: 夢枕獏,村上豊
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/08/04
- メディア: 文庫
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