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「居眠り磐音江戸双紙30 侘助ノ白」 佐伯英泰著 感想

 居眠り磐音江戸双紙シリーズの文庫書き下ろし最新刊「侘助ノ白」の感想です。
 このシリーズもずいぶんと長くなってきましたが、今回は富田天信正流槍折れの小田平助という旅の武芸者が新キャラとして登場。九州から流れ着いたこの棒術使いの老剣客が方言も含めてなかなかにいい味を出しており、今後は主要脇役(という表現も妙ですが)になること確定の予感です。腕はたつけれど、剽軽で楽しい、それでいて苦労人である彼が尚武館の門番として活躍していくのは物語のアクセントにもちょうどいい感じかと思います。ひさびさにいいキャラが出て来たなと読んでいるほうも嬉しくなってきました。
 あと本筋の流れでいうと、こちらも重要脇役の一人であるデブ軍鶏が、高知の主家でのお家騒動に巻き込まれて剣客として初めて人を斬ることになる筋が用意されていて、こちらもデブ軍鶏がまったく使えない道場生だったころから読んでいる身としてはなかなかに感慨深いお話でした。侘助の白というタイトルがちょうどしっくりくるような話でした。
 主人公の磐音があまりに強くなりすぎているから、生半可な敵ではなかなか相手にならないし物語的にも面白くなく、さりとて前巻のような夢の中に侵入してくる妖術師のような相手だと物語がファンタジーに寄り過ぎるしとバランスが難しくなってきた本シリーズですが、この巻はなかなかにいいバランスで面白かったです。

侘助ノ白 ─ 居眠り磐音江戸双紙 30 (双葉文庫)

侘助ノ白 ─ 居眠り磐音江戸双紙 30 (双葉文庫)