「外人術」 佐藤亜紀著
自分の文学的アイドルの一人、佐藤亜紀さんの海外コラム。
ヨーロッパを中心に年に数度は海外、とくにウィーンに旅しておられる佐藤亜紀さんの海外での処世術と日常、および中堅レベルの旅行者にむけての旅行ガイド的な書物なんですが、、、どこをどうとっても佐藤亜紀。彼女の硬質で、ちょっとノーブルな、それでいて食べること飲む事に飽くなきまでに貪欲な姿勢、独自の徹底した審美眼に貫かれた世界がそこには見えていて、素晴らし過ぎます。
どうやら各地で連載をしていたもので、話によっては時期が今から20年ほども前のところもあるのですが、そういうところをさっぴいても瑕疵はほとんど見当たりません。
あくまで「外人」として身を処すことの覚悟と、その見返りの精神的肉体的自由と、帰属しないことの喜び。そういうものが読んでいると圧倒的な力で襲い掛かってきて、将来、あと十年以内には半年くらいあちらで過ごしたいなぁという強烈な想いにかられたりもしました。それくらい破壊力のある旅本です。
ただ、、それだけに、こういうものを書かれると、旅行日記的なものが書けなくなってしまいます。ドバイの話、あといくつかあったんだけれど(記号士さん用には夜のガイドブック的な話とか)、こういう素晴らしい旅本とか書かれると、あんまりにも自分の文章力との差がありすぎてかえってへこんでしまいますが、それくらい素晴らしかったです。
もっとも、文章のスタイル、流れ、佇まいが本当にスタイルとして完全に確立しておられる方なのであわない人には徹底的にあわないかも知れませんが、ヨーロッパのほうへ行く人には是非読んでみて欲しいし、そうでない人も是非。
- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/07/08
- メディア: 文庫
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追記: いま手元に「激しく、速やかな死」という彼女の最新作があります。サド公爵、タレイラン、メッテルニヒ夫人、ボードレールなどなどが主人公の短編集のようですが、本の肌触りが表紙とあいまって魅惑的です。
いずれこちらもレビュー書きます。
- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/06
- メディア: 単行本
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