小説・漫画好きの感想ブログ

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「終末のフール」 伊坂幸太郎著

 伊坂幸太郎、文庫最新刊の感想です。
 「重力ピエロ」の映画化、「魔王」の漫画化などあいかわらずの快進撃を続けている伊坂幸太郎さん作品です。今作は、隕石の直撃による地球滅亡があと8年後と宣告されたあとの日本、仙台市を舞台にした作品で、発表後の5年間で多くの人が死に絶え、やや小康状態になった小さな地方都市の人々の姿を描いた連作短編集です。 
 舞台設定としてはよくあるSFパターンで、伊坂幸太郎節がどのように炸裂するのかと楽しんでいたのですが、いたって薄味。伊坂幸太郎らしくない感じです。彼独特の価値観やら言い回し、伏線がうまいぐあいに収束していく感じがなくって、ちょっとおかしなシチュエーション文学といった感じで、伊坂幸太郎ファンなんだけれど、この作品はちょっと個人的にはお勧めできない感じです。今まで呼んだ伊坂作品の中では個人的には一番はずした感じです。
 どうせSFネタでやるなら、もっと極限状態の中での話にするとか、壊れた人とそうでない人とか色々でてくる話にしてもらった方が面白かったなぁとか、壊れ具合とエゴ丸出しの感じで言ったら新井素子の「おしまいの日」くらい欲望を剥き出しにするか、地球のラストを絡めたぶっとんだ作品にしてもらえたらなぁ、、、と思いました。
 爽快感とか、わくわく感、或は意表をついた展開といったものがなく、なんとなくそれぞれの中でのちょっとした日常で終わってしまったようで、物足りない感じがしました。
 まぁ、それでも好きな作家であることには変わりないんですけれど、この作品だけはちょっと違うな、という感じです。

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)