小説・漫画好きの感想ブログ

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「少し変わった子あります」 森博嗣著

 森博嗣のノンシリーズの独立した一冊です。
 一応、短篇連作集という構成ですが、一冊でまとめて読んだほうがいいつくりです。
 主人公、というよりは主なシチュエーションとなるのは、定まった場所に店を持たず、定まったメニューをもたずに営業している対個人の料理屋さんと女将さん。その料理屋さんはベースは和食のようだけれど、そのときどきの食材を使って料理を出してくれる。ただ、その料理はあくまでサブのもののようで、趣向のメインは、お客様のためにその料理を一緒に食べてくれる女性を毎回一人用意してくれるというサービス。
 こういうと、なんだかいかがわしい物やお色気に偏ったコンパニオン的なものを想像してしまうかも知れないが、そこに現れるのは食べる姿が美しい色々なタイプの女性で、彼女らは決してなにかお客さんにサービスをするということはない。ただただ一緒に少しだけ話をしたり、料理のお相伴にあずかるだけでしかない。しかし、彼女たちと話したり、あるいは沈黙の中で料理をすることが素晴らしく心地よくなってくる。
 そうして、お客達は一人一人バラバラに、そのときそのときに違う場所、違う趣向の場所で、毎回必ず違った女性と一緒に食事をするのだが、、、、、。
 あとは大いにネタバレになるので書けないのだけれど、感想としては大いにあり。こういうタイプの殺人事件も大事件も起こらない、でも気がついてみればちょっと不思議な状況と不思議な世界にはまりこんでしまうタイプの小説は、うまく作るのが難しいものだければ森先生は軽々とそれをやっておしまいになってます。さらっと書いているけれど、巧いです。
 一見、森博嗣の思考実験というかいろいろな考えをつらつらと小説のていを借りて書いているようでありながら、きっちりと計算されつくしたところに落ち着くあたりが本当に上手いです。最近ちょっとミステリシリーズが停滞気味ですが、この腕の冴えで抱えているミステリシリーズをさくさくとこなして欲しいです。

少し変わった子あります (文春文庫)

少し変わった子あります (文春文庫)

ちなみに、文庫版(ハードも同一? )とノベルズ版は表紙の印象がかなり違うんですけれど、自分は上の文庫版のほうが好きです。

少し変わった子あります

少し変わった子あります