「血涙(上)」 北方謙三著
「楊家将」という中国屈指の戦記物を北方謙三がアレンジした前作「楊家将」の後日談というか、正式続編。今回も上下二巻組です。
前作もそうですが、戦記物ですから当然のごとく戦争と軍事、武将達のマッチョな戦いのお話なんですが、「誇り」「プライド」「意地」「最強への強き想い」がものすごいウェイトで全ページ展開されるので、そういうのが苦手な人は絶対に厳しい仕上がりです。でも、こういうのが好きな人にとってはたまらないお話です。
特にこのシリーズの主人公達の「楊家」の人々は政治体制がどうとか国の行方というものよりも武人としての自分たちがどうなのか、最強なのか、どれだけ極められるかが大事なので、戦記物ながら野望や権謀術作にまみれない主人公たちが読めるのもよいのではないでしょうか。
戦国無双とかなみの、まさに超雲や関羽なみの一騎当千の武将達が兄弟でいて、しかもそれらが全員熱い。こういう作品も珍しいと思います。さて、本筋紹介に戻って、この「血涙」では前作のラスト(結果的に前作のネタバレになってしまいますが)からあと、つまりは楊家軍が宋の重鎮の裏切りで全滅して一族がちりぢりになってしまった後の、復活と戦いの物語です。
あいかわらずも延々と続く、宋と遼の戦い。
その戦いの中で、いつも一番厳しい局面で投入される楊家軍。
復活したあともそれは全く変わりません。しかも、最大の敵である遼の独立部隊の「耶律休哥軍」にいる客将的な「石幻果」という強敵は、どうやら記憶を失った楊兄弟の四男であるらしい。敵味方に別れて戦うことになった両者の苦悩と、その四男・四郎と遼の皇帝の叔母との悲恋。なかなかに読ませます。
面白くて上巻一気読みです。
なお、この物語はさらに既刊「水滸伝」や「楊令伝」へとも繋がるので、そちらをお読みの方は全時代のお話としても十分楽しめます(吹毛剣誕生のエピソードも載っています)。
- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2009/04/01
- メディア: 文庫
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