小説・漫画好きの感想ブログ

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「オッド・トーマスの霊感」 ディーン・クーンツ著

 ディーン・クーンツです。
 最初の出会いが悪かった為に、そしてとにかくボリュームが多い感じがしてそれほどのめり込めなかったクーンツですが、これはいいですねぇ。面白かったですし、感動した部分も結構ありました。ステロタイプと言われればそうだし、ご都合主義だと言われればそういう部分もあるんですが、個人的な感覚としては、この主人公、オッド・トーマスが好きです。
 彼は、二十歳そこそこの青年で、家庭環境にはかなり問題があり一人暮らしをしている表面上はごくありふれた青年です。しかし、彼には、霊が見えるという特殊能力があります。彼の前には、この世に怨みを残した幽霊が、或いはこの世でやり残した事がある幽霊や、この世が楽しくて仕方がない幽霊が現れます。通常の小説に出てくるそれとは違って、この小説での幽霊は少なくともオッド・トーマスには言葉を使ってのコミュニケーションはとれません。彼・彼女らはそこにあり、感情や何かを彼に対して態度で訴えるか、ただただそこにいるということになります。
 そして、トーマスはそれ感じ取れることを誰かが彼に与えたギフトであり宿命であると感じ、彼らのために一肌脱ぐ事もしばしばあります。そんな彼の前にときおり現れるボダッハと呼ばれる不思議な黒い何か。物理的には存在しないはずだが、悪霊のように殺人現場や殺人犯のまわりにまとわりつくボダッハたち。
 そのボダッハがある日、一人の男とともにトーマスが住む町へと大量に現れたのです。今までに見た事もないくらい大量のボダッハたちが街のあちこちをウロウロと興味深げに徘徊するのを見て、トーマスはこの街に未曾有宇の災厄が訪れることを知り、彼はそれを防ぐ為に、恋人の静止を振り切り、街を助けるために犯人探しを始めるのでした。。。 
 てなことで、あらすじばかり書いちゃいましたが、、、本当にいい感じです。トーマスのストイックさも、家庭環境の無茶苦茶さも、エルビス・プレスリーの幽霊にも、町の人たちにも楽しませていただき分厚さも気にならないくらいサクサクと読んでしまいました。クーンツが苦手だった人は是非これを読んでみて下さい。
 嬉しいことにこのオッド・トーマスはシリーズになっているようですので、これで終わりではなくその後のストーリーが小説内時間で半年先からまた始まるというのも嬉しいです。
 そんなわけでお勧めの一冊です。

オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)

オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)