小説・漫画好きの感想ブログ

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「獣たちの墓」ローレンス・ブロック著

 ハードボイルドミステリ。
 探偵マットスカダーを主人公とするシリーズの「倒錯三部作」の最終作にあたる作品。この倒錯三部作の犯人は全てがそうですが、猟奇的変質的で悪質な犯罪を繰り返す犯人を相手にスカダーが活躍する作品。
 今回の場合は、女性や子供を誘拐しては猟奇的な方法で嬲り性的暴行をした上で身体をばらばらに切り刻み身代金を巻き上げたあとに遺体を捨てるという犯人たちに、妻をその誘拐犯達に殺された麻薬ディーラーの男が犯人探しを依頼するところから物語は始まります。既に妻を殺されてしまった男は、絶望の中で何かをしたいとスカダーを雇いますが、妻の死体すら既に焼いてなくなっておりてがかりは皆無に等しく、さすがのスカダーも事件解決に難航しますが、地道な捜査と偶然のひらめきでちょっとずつ真相と犯人に迫っていきます。
 このシリーズ、初期と比べるとスカダーが変化していくのも楽しみのひとつで、基本設定もシリーズ当初のアル中状態から、禁酒状態へと物語の進行にしたがって変わりましたし、性格も最初は元お巡りの融通の利かない剣呑な人物像から、ヤクのディーラーからの依頼を引き受けるようにそれはそれこれはこれという割り切りが出来る性格に変化していってます。そして、高級娼婦のエレインとの関係もこの巻で大きく変化するのですが、そのあたりももどかしくも興味深かったです。
 実はこの作品、ずいぶんと前に一度読んでいたのですが、驚くほどに細部を忘れていたのでかなり楽しめました。ローレンス・ブロック、やっぱり上手い作家さんです。
 

獣たちの墓―マット・スカダー・シリーズ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

獣たちの墓―マット・スカダー・シリーズ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 上のアマゾンのタイトル、どうしてクエスチョンマークつき? 獣たちの墓? って。。。どうして疑問形?