小説・漫画好きの感想ブログ

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「ドゥームズディ・ブック」  コニー・ウィリス著

 おはようございます。
 最近、本の更新が遅れ気味でございますが、少しずつ。。
 
 ヒューゴー賞・ネヴュラ賞・ローカス賞受賞の三冠王達成の一冊だけあって、読み応えたっぷりのSFでした。
 本作での2050年代には、タイムトラベルが部分的には可能となり、歴史の研究や学術調査の為に部分的に過去への渡航がなされるようになっています。そして、本作の主人公であるイギリス大学史学科の女子学生・ギブリンは、史学的な調査のために1300年代のオックスフォードへとタイムトラベルすることになります。彼女の指導教授の一人であるダンワーシー教授は、その時代へのトラベル自体が危険であること、彼女のタイムトラベルをとりしきる学部長があまりに無能であり計画がずさんだからやめるように説得し続けるものの、結局タイムトラベルは敢行され、二人は現代と過去に別れます。
 しかし、ギブリンのタイムトラベルが始まったのと前後して、タイムトラベルの技術者を中心にして現代篇では感染病にかかるものが続出、ブレイクアウトして街は封鎖、研究施設も入れなくなり、過去へと送り出したギブリンが正しく現地についたかどうかすら確認できないままとなってしまいます。彼女の安否に気を揉むダンワーシー。しかし、彼の心配をよそに街は病気で無茶苦茶になり、それどころではありません。鉄の意志をもってなんとかしようと頑張るダンワーシーがあまりに不憫でときにシチュエーションコメディのように感じるほどに彼の不運は続きます。
 一方、過去へと跳んだギブリンも、すべての病気に感染しないように予防措置を取り免疫系まで強化していたはずなのに、過去へついていきなり病気で倒れ、死の間際まで追い込まれます。そして、徐々に意識を回復して情報を得るにつれ、自分が間違った時代へととばされていたことを知ります。安全な時代のはずが周囲全てが死に巻き込まれる時代へ跳ばされた彼女は、その時代で現代へ帰るための彼女なりの努力を開始するのですが、それも周囲の状況がそれどころではなくなっていきます。
 そんなこんなで過去篇、現代篇ともに悲惨でハードな状況が続きますが、それぞれの懸命さとまわりの本当にどうしようもない困った性格な人たちへ苛立ち、わーっと叫びたくなるようなイライラを共有しながら読んでいるとあっという間に物語は終局へと進みます。けっこうボリュームもあるし、ハードSF的なSF理論の説明はあまりなく、どちらかというと人間ドラマがほとんどなんですが、読むのは一気になってしまいました。 
 結末がどっちだったかはさすがにネタバレありでも書けませんが、そのラストは意外と淡白だったので、どちらかといえば、その途中過程での過去篇と現代篇での人間模様にどっぷりとひたって共感しながら読むのが正しい読み方になるのでしょう。続編(前編?)として「犬は勘定に入れません」という作品があるので、そちらも読んでみたいと思います。